研究課題
東アジア広域に流行地がある日本住血吸虫症は、単一種の淡水産巻貝Onocomelania hupensisによって媒介される。本課題では異なった地理分布にあり、亜種と分類される中国東部のO. h. hupensis (OHH) 5株、中国西部のO. h. robertsoni (OHR) 1株、日本国内(山梨および木更津)に分布するO. h. nosophora (OHN) 2株およびフィリピンのO. h. quadrasi (OHQ) 2株を対象として、年次計画に従って全ミトコンドリア(mt)ゲノム配列(約15 kb)を決定して系統解析を行った。ロングPCRで増幅したmtゲノムの次世代シーケンサー解析およびマッピングの結果、全サンプルにおいて全領域平均2000x以上かつ99%以上の領域で100xの深度を得た。SNP情報を元にした系統樹解析からは、中国西部OHRとそれ以外が最初に分岐し、その後フィリピンOHQとそれ以外が分岐して、最終的に中国東部OHHから更に日本OHNが分岐したことが示唆された。さらに、最も変異の多かったOHRとOHQの間には全mtゲノムの10.8%に変異が生じていた。以上の結果から、日本住血吸虫の中間宿主であるO. hupensisは、日本住血吸虫が拡大するよりも以前に中国西部から東へ向かって生息域を拡大していく過程で亜種を形成したことが示唆された。このようなミトコンドリアゲノムに見られた差異は、地理分布に基づく貝と虫の感受性を直接に説明するものではなく、まず貝が分布域を拡大して、その後で住血吸虫の分布が続いたこと、即ち貝と虫が常に行動を共にした共進化の経緯を必ずしも支持するものではなかった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Parasitology International
巻: 65 ページ: in press
10.16/j.parint.2016.01.009
巻: 64 ページ: 24-31
10.1016/j.parint.2015.01.005