研究課題
基盤研究(B)
マラリア原虫Plasmodium berghei ANKA感染マウスでは、CD4+T細胞のT細胞受容体刺激に対するIL-2産生が著しく低下する。これは、原虫感染マウスCD4+T細胞が抑制能を有するサイトカインを産生するためであることを明らかにしてきた。このサイトカインはEBI3+であり、EBI3のペア分子が何であるか明らかにすることが重要である。既知のEBI3ペア分子は、IL-27p28とp35である。野性型マウス、EBI3、p28、p38各々の遺伝子欠損マウスCD4+T細胞をTCR欠損マウスの受け身移入し、P. bergheiを感染させた。その結果、CD4+T細胞が産生する抑制因子を同定した。抑制因子を産生するT細胞を同定するために、foxp3発現細胞にhuman CD2を発現するノックインマウスを用い、CD4+ T細胞から制御性T細胞、CD11ahiCD49dhi細胞、CD11aloCD49dlo細胞をソーティングにより分離した。これらの細胞の抑制能とサイトカイン産生能を調べたところ、CD11ahiCD49dhi細胞がマラリア抗原特異的にこの因子を産生することが明らかになった。さらに、試験管内で制御性T細胞とCD11ahiCD49dhi細胞の比較実験を行い、CD11ahiCD49dhi細胞は制御細胞に比肩する程度の強い増殖抑制能があること、この抑制は制御性細胞とは異なり可溶性因子によって行われることが明らかになった。この因子を産生する細胞は、抗原特異的な新規抑制性CD4+T細胞であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
詳細な生物学的解析から、マラリア原虫感染マウスのCD4+T細胞が産生する抑制因子を同定することができた点は、大きな進展であった。これにより、産生細胞の性状の解析や、産生細胞のマラリア感染防御における意義など、研究は次の段階に進展しつつある。完全に未知のサイトカインではなくなったが、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
これまでの研究により、特定の抑制因子産生CD4+T細胞がマラリア原虫感染マウスで誘導されることが明らかになった。今後は、当初の計画に従い、抑制因子産生細胞自身の性状を明らかにし、これらの細胞がマラリア原虫感染により誘導される機構を解明する。また、抑制因子産生細胞をはじめとする免疫制御機構のマラリア原虫感染における意義を解明し、新たなマラリア病態と感染制御に向けて基礎研究を進展させる。
旅費に関しては、海外の学会に出席しなかったため支出が予定より少なかった。物件費、人件費、その他の経費に関しては、試薬の共有など工夫をして節約した結果、若干の資金を翌年に繰り越すことができた。次年度は、計画に沿って研究ををさらに発展させるため、繰り越した経費も含めて使用する。
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