研究課題/領域番号 |
25293102
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
金子 修 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (50325370)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原虫 / 侵入 / シグナル伝達 |
研究概要 |
マラリア原虫の赤血球侵入は宿主体内では必須のステップである。赤血球表面に接着した原虫は、細胞内小器官から種々の分子を秩序だって分泌しながら赤血球に侵入する。ところが、これらの細胞内小器官からの分子分泌に関するシグナル伝達経路は断片的にしかわかっていない。そのため、本研究では、新規コンディショナル・ノックダウン/アウト系により、赤血球侵入期に発現している原虫分子をノックダウン/アウトした組換えネズミマラリア原虫を網羅的に作製し、細胞内小器官からの分子分泌やCa 濃度の変化等を指標に、各細胞内小器官の分泌調節機序のシグナル伝達経路を明らかにすることで、ワクチンや薬剤開発の標的を見出す事を目的とする。 平成25年度は、組換え法により標的遺伝子座をゲノムから完全に除去する方法と組み合わせて、標的タンパク質を全く発現しない原虫を作製する手法(コンディショナル・ノックアウト)の開発を試みた。P.bergheiで成功しているTet発現誘導系をP. yoeliiに応用するために、まず、栄養体期に発現するmsp8遺伝子の発現を抑制するようにデザインした組換えP. yoeliiを作製したが、Tetによりmsp8の発現量に変化が見られなかった。また、メロゾイト期に発現するeblの発現を抑制するようにデザインした組換えP. yoeliiの作製も試みたが、組換え原虫が得られなかった。そのため、P. bergheiにてTet発現誘導系ができたと報告されたprf遺伝子を標的に、完全に相同なゲノム位置を標的として、使用されたのと同等のプラスミドをP. yoelii用に構築し組換えP. yoeliiを作製したが、Tetによりprfの発現量にも変化が見られなかった。そのため、実験コントロールとして、Tet発現誘導系によりprf遺伝子の遺伝子発現が抑制される遺伝子組換えP. bergheiの入手を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ネズミマラリア原虫P. bergheiで見られたと報告されたTet発現誘導系がネズミマラリア原虫P. yoeliiでの作用が確認できなかったため、この原因を明らかにするのに時間がとられた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度にTet発現誘導系によりmsp8遺伝子の発現を抑制するようにした組換えP. yoeliiを作製したが、Tetによりmsp8の発現量に変化が見られなかった。そのため、P. bergheiにてTet発現誘導系ができたと報告されているprf遺伝子を標的に、完全に相同なゲノム位置を標的として、使用されたのと同等のプラスミドをP. yoelii用に構築し組換えP. yoeliiを作製したが、Tetによりprfの発現量にも変化が見られなかった。平成26年度は別のステージに発現する分子を標的にして、引き続き本法の確立を目指して研究を進め、続いて、Tet 発現誘導系とFlp/FRT 部位特異的組換え法により標的遺伝子座をゲノムから完全に除去する方法と組み合わせて、標的タンパク質を全く発現しない原虫を作製する手法の開発を試みる。Tetによる発現誘導系ができ次第、熱帯熱マラリア原虫赤血球侵入型原虫の網羅的転写解析により赤血球侵入期に発現する事が分かっている分子のP. yoelii相同体を約100分子選択し、コンディショナル・ノックダウン/アウト用プラスミドの構築を行う。構築したプラスミドをネズミマラリア原虫に遺伝子導入し、組換え原虫を作製する。組換え原虫が得られれば、順に標的遺伝子の発現をノックダウン/アウトし、増殖率の低下を指標にスクリーニングし、増殖に関与する分子すなわち侵入効率が減少していると考えられる原虫を選択する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に購入予定として予算計上していた超低温フリーザー(220万円)を平成26年度に購入することとしたため。また、実験計画がやや遅れ、平成25年度に予定していた遺伝子導入用プラスミドと遺伝子改変原虫の作製を平成26年度以降に行うこととなったため。 超低温フリーザーを平成26年度に購入し、残額は多数の遺伝子導入用プラスミドと遺伝子改変原虫の作製をするための消耗品費として使用する。
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