研究課題/領域番号 |
25293106
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
岡田 信彦 北里大学, 薬学部, 教授 (80194364)
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研究分担者 |
羽田 健 北里大学, 薬学部, 講師 (00348591)
守屋 智草 北里大学, 薬学部, 助教 (90518101)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サルモネラ / 腸管感染モデル / 腸炎 / 三型分泌機構 / 三型エフェクター |
研究実績の概要 |
サルモネラは、腸管粘膜で感染し、粘膜上皮細胞を通過し粘膜固有層に至る。この感染過程において、サルモネラが三型分泌機構を介して分泌する三型エフェクターにより炎症が誘導される。本研究では、サルモネラの三型エフェクターにより制御される宿主の免疫応答について、マウス腸管感染モデルを用いて解析し、サルモネラ感染初期過程における炎症応答制御機構を明らかにすることを目的とする。平成26年度は、これまでに同定した炎症抑制に関わる三型エフェクターについて、その作用機序を明らかにするとともに相互作用する宿主因子の同定を試みた。 サルモネラの三型エフェクターとして同定されている38個のタンパク質のうち、炎症特抑制型エフェクターを6個見いだした。このうち、炎症抑制型のSseK1、SseK2及びSseK3の標的分子は、TRADD及びFADD などの death domain であることを明らかにし、GlcNAc転移活性を有するこれら3つのエフェクターは、TNF-αによるシグナル伝達経路にあるTRADDを酵素的に修飾し、シグナル伝達を阻害することが示唆された。一方、別の炎症抑制型エフェクターであるエフェクターAおよびエフェクターBは、標的分子が、NF-κBのp65分子であり、酵素的にp65の分解を促進することを明らかにした。エフェクターCについては、現在その標的分子の探索を行っている。 SseK1、SseK2及びSseK3のマウスに対する病原性の評価をマウス腸炎モデルにより評価した。それぞれの遺伝を単独に欠失した変異株では、野生株と比較して病原性の違いは認められなかった。そこで、全ての遺伝子を欠失した三重変異株を作成し、腸管感染に対する病原性の違いを比較したが、同様に野生株との違いはみられず、新たなマウス腸炎評価系の構築が今後の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サルモネラの三型エフェクターとして同定されている38個のタンパク質のうち、炎症抑制型エフェクターを6個見いだした。このうち3個はサルモネラでは初めて同定されたエフェクター機能であった。それぞれ炎症抑制型エフェクターの標的分子を同定し、その機能についても明らかにすることができた。炎症抑制型エフェクターの同定後、順調に機能解析を進めることができ、ほぼ予定の実験を終了したことになる。一方で、予定していたサルモネラ感染過程における炎症抑制型エフェクターの役割をマウス腸管モデルにより明らかにするところまでは達成することができなかった。これは、予想された範囲内のことであり、マウス感染実験の条件検討を行った後、予想される成果を得ることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新たに同定した炎症抑制型エフェクターのうちエフェクターCは、サルモネラに特異的なタンパク質であり、サルモネラ以外には相同性を持つ三型エフェクターが存在しないことから、サルモネラの感染過程を特徴付ける重要なエフェクターの1つであることが予想される。したがって、エフェクターCの標的分子及び機能解析をさらに進めていくことで、サルモネラの感染機構を明らかにしていく。 また、炎症抑制型エフェクターのin vivoにおける機能解析のために、マウス腸管モデルによる感染実験を表現型が最も良く現れるよう改良を加える。そのために、マウスの種類、感染時間、感染量などいくつかの実験項条件について検討し、最適化を行い、野生株とエフェクター欠失株との間に、病理学的、免疫学的な違いが明らかになるような感染条件を整える。
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