研究課題/領域番号 |
25293108
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
白木 公康 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50135745)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 水痘帯状疱疹ウイルス / 潜伏感染 / 抗原偏重作用 / 中和抗体 / 帯状疱疹 |
研究概要 |
「水痘ウイルスのAntigenic modulationによる潜伏感染の解析」をテーマとして、水痘ウイルス感染細胞における感染制御と潜伏感染化の過程の解析を予定している。平成25年度では、ウイルスの主要転写調節因子IE62と細胞の主要転写因子Sp1の局在について、抗体のない通常の感染系(Lytic)と本テーマの抗体処理細胞における存在様式について検討した。感染3時間後には核内にIE62とSp1の共局在が確認され、18時間までは時間経過とともにそれらの発現は増強し、局在もreplication区画に強く認められた。24時間を過ぎると抗体処理細胞特有の分布を示す細胞が認められるようになり、IE62とSP1の乖離が認められる細胞や両者が核に移行しないで細胞質内とどまる細胞とが認められるようになった。すなわち、感染18時間までは、IE62とSP1が共局在してウイルスタンパクの転写が促進され、ウイルスDNA合成により、更にウイルスタンパクの転写が促進されていた。一方、抗体処理細胞では、ウイルスDNA合成やタンパク合成には至るが、IE62とSP1の乖離や細胞質内での停留が認められ、ウイルスタンパク合成が阻害される過程が確認された。これらの結果は感染性の消失過程と一致していた。 これまでに、潜伏感染化を阻止する薬剤について検討を行う中で、もっとも潜伏感染化を阻害する化合物として、buthionine sulfoximine(BSO)を見出した。それで、ウイルスタンパクの合成阻害過程に対するBSOの効果について、上記の実験系でのIE62とSP1の存在様式に対する影響を検討した。その結果、抗体処理細胞において、24時間と36時間後には、BSO処理細胞では、その変化が進行しない細胞群が認められた。機序は明確ではないが、現在その過程の検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
結果で記載したように、IE62とSp1の核内の共局在はlyticと抗体処理で共通するが、24時間以降で差異を生じること、また、BSO処理で感染性の不活化が阻害される過程が明らかにできた。ウイルス感染の終息過程と感染状態の維持に関する因子が明らかにできる端緒を得られたことは高く評価できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
通常感染と抗体処理の場合の遺伝子発現と蛋白の発現の特徴を明らかにできた。抗体処理細胞では通常存在しない前初期のIE62が細胞質内に存在することが確認できた。そこで、本来のIE62は1310アミノ酸であるが、核移行シグナル(677-685)を欠失した680アミノ酸以下であることが予想される。従って、この潜伏感染IE62転写産物が見つかれば、感染細胞における潜伏感染時のIE62転写産物の役割と意義を検討する。さらに、潜伏感染細胞から、潜伏感染特有IE62関連のmRNAの分離を行う。 細胞質内IE62とSp1の共局在は、ウイルス特異的転写促進因子の細胞から核への移行の阻害であり、感染停止に大きな意義を有すると思われる。抗gH抗体がgHと反応して生じることから、この情報がどのように核移行の阻害に関連するのか、これらの転写因子複合体の細胞内での処理に関して、どのような機構が存在するのかを解析する予定である。 抗体処理細胞のBSO処理は、感染性の喪失を阻害し、IE62とSp1の分布に影響を与えている。この影響は、細胞質内のタンパク質の分布の影響によるものなのか、それとも、IE62を介しての影響が出るのかを検討する。以上のように、抗体処理による細胞内タンパクの輸送と分布への影響として、細胞の転写促進因子SP1とIE62の細胞内での分布を修飾することが、転写制御にかかわっている可能性が示唆される。いかなる機構を介して、IE62の細胞内分布に影響しているかを他の細胞性因子にタンパクとの共局在による検討を実施したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は生じたが、3,400円と少額である。 上記で述べたとおり、次年度使用額は3,400円と少額であるため、研究費はほぼ計画通りに使用できている。来年度以降もこのまま計画通り使用を進めていく予定である。
|