研究課題/領域番号 |
25293110
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
加藤 宣之 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40150883)
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研究分担者 |
池田 正徳 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30315767)
團迫 浩方 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80379841)
佐藤 伸哉 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80333558)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 長期継代培養 / 遺伝子発現変動 / miRNA発現変動 / Exosome / ヒト不死化肝細胞 / RNA複製増殖 |
研究概要 |
我々が、これまでに開発、樹立したHuH-7およびLi23ヒト肝がん細胞株由来のC型肝炎ウイルス(HCV) RNA複製細胞クローン株(複数)を用いて、HCV RNAの長期複製増殖とがん化誘導との関係を明らかにすることを目的として以下の4項目についての研究を行った。 (1)HCVの長期複製により不可逆的発現変動を示した宿主遺伝子に関する解析. HCV RNAの長期複製により発現量が変化した9遺伝子について、数種類の不死化ヒト肝細胞株における発現プロファイルを作成した。発現量が変化した9遺伝子のうち顕著な発現抑制の観察された2遺伝子について、それらの遺伝子プロモーター解析による発現責任領域の同定を行うとともに、発現抑制にDNAのメチル化が関与していることを明らかにした。また、長期培養によるHCVの遺伝子変異動態についても明らかにした。 (2)HCVの長期複製により不可逆的発現変動を示すmiRNAに関する解析. 長期に継代した2種類のHCV RNA複製細胞とそれらの治癒細胞(インターフェロンによりHCV RNAを細胞から人為的に排除した細胞)を用いて、miRNA アレイの比較解析を行い、HCV RNAの長期複製により不可逆的に発現抑制を示す2種類のmiRNAを同定した。 (3)HCVの長期複製によるExosomeの質的変動に関する解析. Exosomeの調製方法は、幾つかあり、それぞれ一長一短であるため、長期継代培養したHCV RNA複製細胞を用いて、Exosomeの調製方法の最適化を行った。 (4)不死化ヒト肝細胞を用いた新規HCV RNA複製細胞モデルの開発. HCV RNAの効率的な複製に必要なmiR122を高発現させた不死化ヒト肝細胞株PH5CH8を用いて、HCV RNA複製細胞モデルの開発を試みた。その結果、miR122以外にも宿主因子がさらに必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の柱である4項目のうち、(1)と(2)については、当初の計画どおり順調に進展しており、今後の展開が期待できる研究成果が得られた。また、HCV RNAの長期複製により生じるHCV遺伝子の変異と多様性獲得動態を詳細に解析することができたため、本研究において解析対象としている宿主因子との相互作用において、重要な情報になるものと期待できる。研究項目(3)については、当初の予想とは異なり、Exosomeの精製方法により結果が異なることが予想されたため、今年度は、精製方法の改良に時間を費やした。しかしながら、次年度は、本格的に解析を開始する予定である。研究項目(4)については、当初から困難な課題であるとは予想していたが、実験の結果、細胞の更なる改良が必要であることが分かった。全体としての進捗状況は、概ね良好で予想していた範囲内にあり、次年度の研究成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初の研究計画に沿って進行しているため、推進方策の変更はない。 従って、今後も4つの項目について、それぞれの計画にそって、進めて行く予定である。 具体的には、(1)については、解析の進んだ2遺伝子に焦点を絞って解析し、これらの遺伝子発現の低下が細胞にどのような変化を及ぼすかについてヒト不死化肝細胞を用いて解析する予定である。(2)については、目的とするmiRNAが2種類得られたので、前項同様、これらのmiRNAの低下が細胞にどのような変化を及ぼすかを解析する予定である。(3)については、HCV RNA複製細胞の長期継代によるExosomeの量的変動を定量的に解析する予定である。(4)については、ヒト不死化肝細胞に新たに必要な遺伝子を導入して、引き続き目的の細胞システムの開発を目指す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
比較的単価の高いsiRNAやExosome精製キットなどの使用量が予想より大幅に少なかったため、物品費の実支出が少なくなった。 次年度は、siRNAやExosome精製キットを多用する計画のため、支出が増えると予想される。また、研究成果についても積極的に国内外で発表する予定であるので、旅費の支出が増加する予定である。
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