研究課題/領域番号 |
25293112
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
倉根 一郎 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (90278656)
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研究分担者 |
鈴木 隆二 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), その他部局等, その他 (70373470)
松谷 隆治 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (70372290)
高崎 智彦 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (20221351)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感染防御・制御 / デングウイルス / マーモセット |
研究概要 |
デング熱とデング出血熱は、世界で最も重要な蚊媒介性ウイルス感染症といえる。流行地域拡大と感染者の増大が深刻な問題となっている。特異的治療法は存在せず、ワクチンも未だ実用化には至っていない。病態形成機序の解明、及び治療法確立に動物モデルの確立が急務である。我々はこれまでデングウイルスが、マーモセットに感染し、初感染においてヒトにおけるウイルス学的、免疫学的反応を示し、デング熱症状の一部をしめすことを報告した。本研究は、デング出血熱モデルを確立し、病態形成の基盤となるウイルス免疫学的機序、および免疫遺伝的機序を明らかにし、さらに、病態形成機序に基づく新規治療法開発の基盤を確立することにある。ヒトにおいては、再感染時にデング出血熱の発症率が高いことから、デングウイルス再感染時における病態、ウイルス学的、免疫学的応答を解析した。IgM抗体反応は初感染に比べ遅くまた低レベルであった。また、IgG抗体反応は初感染に比べ感染後早期から認められ初感染に比べ高レベルであった。これらの免疫応答はヒトにおける再感染時の反応と同様であった。さらに、中和抗体のレベルをFcレセプター陽性細胞及び、陰性細胞によって測定した。陰性細胞による測定では、中和抗体は血清型交叉性であり、いずれの血清型にも高いレベルの中和抗体価が観察された。一方、Fcレセプター陽性細胞による測定によっては、抗体の交叉性は低く、特に再感染初期においては初感染のウイルス血清型に対して認められた。血清型交叉性中和抗体はレベルも低く感染後14日に認められた。この抗体反応もヒトとほぼ同様であった。デング出血熱の症状はいずれのサルにおいても出現しなかった。一方、感染後のウイルス動態、抗体反応はヒトにおける再感染時と同様であった。本結果より、マーモセットはデングウイルス再感染モデルとなりうることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、マーモセットのデングウイルス初感染においてウイルス血症や抗体応答はヒトにおける反応と同様であることを示した。しかし、デング出血熱に特徴的な症状は認められなかった。ヒトにおいてはデングウイルス再感染においてデング出血熱を発症する率が高まることが知られている。本年度はマーモセットにおけるデングウイルス再感染の病態をウイルス学的、免疫学的に解析した。初感染と再感染においては複数の組み合わせを試みた。組み合わせとして①デングウイルス3型初感染、2型再感染、②2型初感染、1型再感染、③2型初感染、3型再感染を行った。初感染と再感染の期間は59週あるいは83週とした。再感染後2,4,7日にどの型によってもコンスタントに高いレベルのウイルス血症が認められた。再感染後はFcレセプター陽性BHK細胞による測定によって、Fcレセプター陰性BHK細胞に比べ高いレベルのウイルス価が認められ、感染性を有するウイルス-免疫複合体の存在が示唆された。IgM抗体反応は初感染に比べ遅くまた低レベルであった。また、IgG抗体反応は初感染に比べ感染後早期から認められ初感染に比べ高レベルであった。これらの免疫応答はヒトにおける再感染時の反応と同様であった。さらに、中和抗体のレベルをFcレセプター陽性細胞及び、陰性細胞によって測定した。陰性細胞による測定では、中和抗体は血清型交叉性であり、いずれの血清型にも高いレベルの中和抗体価が観察された。一方、Fcレセプター陽性細胞による測定によっては、抗体の交叉性は低く、特に再感染初期においては初感染のウイルス血清型に対して認められた。血清型交叉性中和抗体はレベルも低く感染後14日に認められた。この抗体反応もヒトとほぼ同様であった。デング出血熱の症状はいずれのサルにおいても出現しなかったが、マーモセットはデングウイルス再感染モデルとなりうることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の感染実験で得られたサンプルを用いて、独自に確立したマーモセットの網羅的T細胞レセプター(TCR)レパトア解析を行い、TCRレパトアの偏りについて検討する。デングウイルス初感染及び再感染時のマーモセットについて、血液(剖検時:各種臓器・組織)についてサイトカイン・ケモカイン等の蛋白量、発現量を解析しT細胞の挙動を中心に免疫系の変動を明らかにする。また、異なる血清型ウイルスによる単回あるいは二回目接種マーモセットの末梢血試料よりCD4,CD8または利用可能な抗体を用い細胞を分画する。各分画のCDR3配列をマルチプレックス法により同時シーケンス解析する。単回接種においては異なる血清型ウイルス間、あるいは二回接種においては異なる血清型組み合わせ間でT細胞動態の差異を調べる。特定の血清型ウイルスに対し、どんな特徴のT細胞レセプターを有する細胞がどのどれくらい誘導され、どの程度の交叉反応かを明らかにする。前年度に同定されたMHCアレルに対し特異的プライマーを作製する。各プライマーの至適PCR増幅条件を検討し、PCR-based MHCアレルタイピング法を確立する。マーモセット末梢血細胞を用い、MHC遺伝子の増幅およびハプロタイプを決定する。さらに、マーモセットにおけるデングウイルス抗原エピトープの探索を試みる。そのため、ウイルス遺伝子の3種類の構造蛋白(C, PrM, E)および7種類の非構造蛋白(NS1、NS2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b、NS5) のうちPrM、EやNS3を含む数種について組換え遺伝子プラスミドを作製し、発現細胞に対するキラー活性を測定する。同定された抗原蛋白の配列情報からオーバーラップ・ペプチドを合成し、抗原エピトープを同定する。MHCタイピングを実施し後、特定の同じMHCアレルを有するマーモセットから得られた細胞を用い、自己のB細胞株に対する細胞障害性Tリンパ球(CTL)活性試験等から認識するペプチドの検索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度収集したサンプルを用いて、次年度に解析する必要が生じたため、その資金を次年度に繰り越した。 デングウイルス感染マーモセットから収集した各臓器(脾臓、肝臓等)について詳細なウイルス学的、免疫病理的な解析を行う。
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