研究課題/領域番号 |
25293115
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊勢 渉 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授 (70323483)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ヘルパーT細胞 / 抗体産生 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
1. 記憶TFH細胞の生存維持、活性化機構 研究代表者はこれまでに濾胞性ヘルパーT細胞(TFH細胞)が記憶T細胞として長期生存できることを明らかにしていた。昨年度は記憶T細胞の維持機構と活性化の機構について解析を行った。記憶TFH細胞はT細胞領域のみならず、T細胞-B細胞領域の境界やB細胞領域にも存在していた。記憶TFH細胞が発現するBcl6のレベルは非常に低いものであったが、Bcl6を誘導性にノックアウトすると記憶TFH細胞数が著しく減少したことから、Bcl6は記憶TFH細胞の維持に必要であることが判明した。記憶TFH細胞は再刺激後速やかにBcl6を高発現し、Bcl6発現のkineticsは一次応答時よりもはるかに速いものであった。記憶TFH細胞の再活性化は一次応答時とは異なり、樹状細胞の非存在下で起こりうることが樹状細胞を誘導性に除去する実験系で明らかとなった。記憶TFH細胞の活性化には抗原特異的記憶B細胞による抗原提示が必要であった。以上のことから抗原特異的記憶TFH細胞と記憶B細胞の効率の良い相互作用が、記憶抗体産生応答を制御していることが示唆された(Ise et al. PNAS 2014)。
2. 転写因子BATFの誘導性ノックアウトマウスの樹立 転写因子BATFはTFH細胞や胚中心形成に必須の転写因子である。しかしその詳細な分子機構は不明である。研究代表者はこれまでにBATFのT細胞、B細胞特異的ノックアウトマウスを樹立していた。今年度はERT2-creマウスと交配し、タモキシフェン投与による誘導性ノックアウトが可能なマウスを樹立した。これにより転写因子BATFがTFH細胞の維持や胚中心の維持に果たす役割を解析することが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は記憶TFH細胞の維持や活性化機構に関する研究結果を論文として発表することができた(Ise et al., PNAS 2014)。またBATFの誘導性ノックアウトマウスやTFH細胞の運命追跡系も樹立できたことから、今後の研究も順調に進展することが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は交付申請書に記載したように、記憶TFH細胞の維持の分子機構やTFH細胞の運命追跡を行っていく予定である。これらの点については世界的にも解析が進んでおらず、研究代表者が使用しているユニークな実験系により新規性の高い結果が得られることが期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた物品(消耗品)の購入を中止したことによる
|
次年度使用額の使用計画 |
マウスの飼育費ならびに実験で使用する物品(消耗品)の購入にあてる予定である。
|