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2013 年度 実績報告書

精神科医療でのリカバリー志向の共同意思決定を促進するPCツールの開発と効果検証

研究課題

研究課題/領域番号 25293123
研究種目

基盤研究(B)

研究機関独立行政法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

伊藤 順一郎  独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所社会復帰研究部, 部長 (80168351)

研究分担者 福井 里江  東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80376839)
坂田 増弘  独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 医長 (20343121)
山口 創生  独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所社会復帰研究部, 流動研究員 (20611924)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード医療・福祉 / 社会医学 / リハビリテーション / 社会福祉関係 / 共同意思決定
研究概要

本年度の目的は、リカバリー志向のshared decision making(SDM)を促進するPCソフト(ツール)や現実的なシステムの考案であった。具体的な計画として、SDMの勉強会、SDMツールのコンテンツの開発、ピアスタッフ(当事者スタッフ)の雇用等を含めた精神科医療機関におけるSDMシステムの提案を予定していた。
SDM勉強会について、精神障害者のリカバリーを重視したSDMの在り方について、過去の知見をまとめ、日本におけるSDM実施に向けた課題を明らかにした(山口ら, 2013)。また、患者-医師関係の文献研究も行った。
ツールの開発については、当事者の意見を多く取りいれながら、コンテンツの概要が決まった。例えば、ツールの画面上で、SDMで重要となる自身の状態についての表現は、医学的な表現ではなく、当事者自身が使う言葉を用いるなどして、当事者が共感でき、理解しやすい言葉を選択した。日本では薬物療法だけに着目したSDMもあるが、本来SDMはリカバリーを促進するものである。当事者の好みに合わせたツールの作成は彼らのリカバリーに寄与すると想像できる。なお、ツールは、2014年5月にデモ版が完成する予定である。また、ツールの名称はSHARE (Sharing Hope And REcovery)とした。
精神科医療機関におけるSDMシステムについて、研究協力機関となる2つの精神科医療機関において、(当事者スタッフ)の雇用の体制を整え、2014年度からは両機関でピアスタッフが働いている。日本ではピアスタッフのニーズやピアスタッフになりたい当事者が増えている一方で、雇用の場は確保されていない。我々が推し進める医療機関でのリカバリー志向のSDMの推進は、ピアスタッフの雇用が条件であり、リカバリーとピアスタッフの活躍の場を広げるという双方の面で重要になると予想される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、専門職や当事者、業者(パソコンソフトの開発企業)と議論を重ねることによって、Shared decision making(SDM)の促進ツール(パソコンソフト)の内容や、実際の臨床現場におけるツールの運用方法、ピアスタッフの雇用体制、専門職・当事者向けSDM研修のあり方、評価研究のプロトコルの概要を決定した。特に、評価研究の実施機関におけるピアスタッフの雇用についてはすでに開始しており、臨床環境の整備を着実に進めてきた。
26年度のSDMツールの開発費(支払額)が膨らむことから、26年度に実施する予定であった海外視察を断念し、他の研究費で来日した米国の研究者からSDMツールや研修に関する意見をもらった。
なお、当初の研究計画では、最終年度の評価研究は対照群を設置した事前事後評価であったが、臨床職員の理解により、無作為化比較臨床試験の実施が可能となった。そのため、評価研究から得られるエビデンスの質が向上すると予想される。

今後の研究の推進方策

平成26年5月にSDMツールのデモ版が完成する予定である。SDMツールの完成に合わせ、7月にはSDMを実施する機関のスタッフを対象とした研修を行う予定である。医師向け研修は10月に実施予定である。また「現在までの達成度」で述べたように、現場スタッフの理解と協力により、評価研究は、無作為化比較臨床試験の実施が可能となった。このため、無作為割付けの作業や事前の調整などが必要になったため、評価研究の開始時期をはやめ平成26年8月には本格的な調査が始まり、11月には実際に研修を受けたスタッフが、ツールを用いてSDMを実施する予定である。
課題としては、患者のリクルートがあげられる。協力機関が2機関のみであるため、対象となる患者の母数が多いとは言えない。そのため、研究参加に関する導入基準を緩くすることで対応している。

次年度の研究費の使用計画

次年度は、PCソフト(SDMツール)の開発業者へのSDMツールの作成についての支払いがある。また、評価研究も始まることから、対象者への謝金などで費用がかさむと予想される。よって、SDMツール開発と研究開始が金銭的な面で進捗が遅れないように、今年度の使用金額を可能な限り節約した。
上記、理由にあるように、PCソフト(SDMツール)の開発業者に対する支払いを行う。具体的には、SDMツールが2014年7月、8月に納品される予定であり、それ以降に支払する予定である。
また、研究開始時期が2014年8月であることから、対象者となった方には、自記式調査票の回収と合わせて、謝金をお支払する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] 日本の精神科診療における患者-医師関係とコミュニケーション:システマティック・レビュー2014

    • 著者名/発表者名
      山口創生,種田綾乃, 市川健,坂田増弘,久永文恵,福井里江,藤田英親,伊藤順一郎
    • 雑誌名

      精神医学

      巻: 56(6) ページ: 523-534

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 精神障害者支援におけるShared decision makingの実施に向けた課題:歴史的背景と理論的根拠2013

    • 著者名/発表者名
      山口創生, 種田綾乃, 下平美智代, 久永文恵, 福井里江, 吉田光爾, 佐藤さやか, 片山優美子, 伊藤順一郎
    • 雑誌名

      精神障害とリハビリテーション

      巻: 17 ページ: 182-192

    • 査読あり

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公開日: 2015-05-28  

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