研究課題/領域番号 |
25293128
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
前川 京子 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (70270626)
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研究分担者 |
谷内田 真一 国立研究開発法人国立がん研究センター, がんゲノミクス研究分野, ユニット長 (20359920)
斎藤 嘉朗 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 部長 (50215571)
安達 基泰 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構, 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員 (60293958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酵素 / 癌 / 生理活性 |
研究実績の概要 |
「オーファンP450」に属するヒトCYP2U1、CYP4X1、CYP4Z1等は、腫瘍組織に高い発現が認められるものの、酵素機能が不明であり、高発現の病態生理学的意義が未解明である。本研究では、オーファンP450の酵素機能と分子構造学的特性の解明、及び腫瘍における高発現の病態生理学意義の解明を目的として、①組換え酵素を用いたin vitro機能解析・構造解析、②臨床試料を用いた発現解析・メタボローム解析を行う。 本年度はオーファンP450発現系を大腸菌からカイコーバキュロウイルスを用いた系に切りかえ、CYP2U1とcytochrome P450 reductase(CPR)をそれぞれ発現する組換えウイルスを作製して、カイコに共感染させた。カイコ磨砕物中にCYP2U1の発現をFLAGタグを用いたウエスタンプロットで確認し、ミクロソームを抽出してCYP2U1の発現をCO差スペクトルで検出した。大腸菌による発現系とは異なり、ヘム鉄を有するホロ酵素のCYP2U1が発現していることが確認できたが、タンパクの精製を行うに十分な発現量が確保できず、発現量を増やすための条件検討(CYP2U1とCPRの比の最適化等)が必要と考えられた。 臨床試料を用いた解析では、25症例の乳がん患者の手術で摘出した腫瘍部、非がん部のペアーを用いてメタボローム解析とmRNA発現解析を行った。メタボローム解析では、オーファンP450が関与することが示唆されている脂肪酸代謝パスウェイにおいて、腫瘍部で非がん部と比較して有意に増加する代謝物を、11個見出した。mRNA発現解析では、一部の患者において、CYP4Z1の発現が腫瘍部で非がん部の最大で27倍に過剰発現していることを示した。今後はオーファンP450mRNAの発現、脂肪酸代謝物レベルと患者背景因子に関して相関解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大腸菌を用いた発現系では、活性を有するオーファンP450の発現が難しいことから、バキュロウイルス・昆虫細胞発現系に切り替えたが、この系の構築にはP450とreductaseの発現比等の条件検討が必要であり時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
実験助手を雇用し、測定・解析の効率化をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外での学会発表を見合わせたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度の未使用額は、今年度の物品費、人件費、旅費に使用する。
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