研究課題
基盤研究(B)
本研究は、ごく最近我々の発見したアンチトロンビン・レジスタンス(ATR)を示すトロンビンを生ずるプロトロンビン異常症(c.1787G>T, p.R596L)の概念に基づき、原因不明の遺伝性血栓症例での新規ATR症例の検索とその遺伝子変異同定を行うとともに、組換え変異体解析による他のプロトロンビン変異体でのATR惹起性検索による新たなATR候補変異解析を行い、さらにR593L変異(ヒト分子596Rはマウス分子593Rに相当)プロトロンビンノックイン-マウス(R593Lプロトロンビン-マウス)の作製解析によりin vivo でのATRの病態解析を行い、血栓性素因・ATRの分子病態を解明することを目的とする。今年度は、血漿検体を用いた迅速ATR検出スクリーニング法(Murataら: Thromb Res. 2014)を用いたAT-R新規症例の検索とその遺伝子変異の同定解析を行ったところ、日本人家系でのATR検出例はなかったが、セルビア家系の遺伝性血栓症において新たなAT-R症例を検出した(Djordjevicら: JTH, 2013)。また、596Rの一塩基置換により生ずるミスセンス変異体でのAT-R惹起性スクリーニングでは、各組換え体由来の変異型トロンビンはTAT形成能が悪くATRを示すことが明らかとなった。一方、ATRプロトロンビン変異(R596L)の生理的凝固制御機構トロンボモジュリン/プロテインC経路への影響を検討したところ、変異型トロンビンはトロンボモジュリンによるフィブリン凝固抑制に抵抗性を示したが、プロテインC活性化亢進能は保たれていた(投稿準備中)。さらに、R593Lプロトロンビン-マウス用のターゲティングベクターを作製し、ES細胞での相同組換えにて得られたキメラマウス作製とC58BL6マウスを交配してヘテロマウスを得て、現在バッククロス中である。
1: 当初の計画以上に進展している
(理由)当初計画より、R593L プロトロンビン-ノックインマウス作製が順調に進み、平成26年度に予定していたキメラマウス引き渡しを今年度に受け、その経費を依頼先である大阪大学微生物病研究所 附属遺伝情報実験センター・遺伝子機能解析分野(発生工学研究会)に支払う必要性が生じたため、基金分の50万円の前倒し支払請求を必要とした。また、新たなATR症例を同定した。
(今後の推進方策)平成26年度以降は、 新たなATR症例の検索とともに、R593L プロトロンビン-ノックインキメラマウスの交配により目的のR593Lプロトロンビン-マウス(ヘテロマウス)を作製し、さらにCre recombinase発現マウスと交配しNeo配列を取り除いたR593Lプロトロンビン-マウス(ヘテロおよびホモ)を作製する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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