研究課題/領域番号 |
25293132
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70250917)
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研究分担者 |
河野 嘉文 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20260680)
大山 陽子 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 特任助教 (20583470)
渡邊 修 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (30511802)
竹之内 和則 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (30646758)
清水 利昭 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50468055)
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237577)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝再生 / 巨核球 / 血小板 / 骨髄 / 増殖因子 / VEGF-A |
研究実績の概要 |
血管内皮細胞増殖因子(以下 VEGF-A)は血管新生作用・血管透過性作用を有するangiogenesis、vasculogenesis の鍵分子である。循環血中のVEGF-A はその殆どが血小板に含まれており止血反応に続く創傷治癒の過程に重要な役割を果たすと考えられる。またVEGF-Aの血清中の濃度は血漿中よりも高く血小板1個当たりに含まれるVEGF-Aの平均含有量(以下血小板VEGF-A)を測定することが可能である。血小板VEGF-Aは血小板の質の評価の一つであり、また血小板が骨髄巨核球から産生されることから血小板VEGF-Aは骨髄機能を反映している可能性を考えている。我々は血小板VEGF-Aが播種性血管内凝固症候群を含む臨床経過の過程でダイナミックに変化すること(Intern Med 42:1240, 2003)、血小板VEGF-Aが川崎病の病態においてCAA (Coronary artery abnormalities) Z-scoreと有意な相関を示すこと (Br J Haematol 148: 285, 2010) また再生不良性貧血の病態において慢性型が急性型に比べて優位に高値を示すこと (Int J hematol 95: 494, 2012) を報告してきた。これらの報告は血小板に含まれる増殖因子量の評価が骨髄予備能を含めた病態の評価に繋がることを示唆する。今年度の研究成果として、37例の肝切除の患者の検討の結果、術後28日後の血小板VEGF-Aが術前に比較して優位に増加しており、その増加はmajor surgeryがminor surgeryに比較して顕著であり、切除肝のvolumeにも優位に相関した。今年度の結果は肝再生の骨髄へのシグナルが骨髄巨核球の増殖因子産生のシグナルに変換され、血小板機能をpotentiateすることを示唆すると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、肝切除患者の肝再生における血小板VEGFの関与を証明したことより、肝再生の骨髄へのシグナルが骨髄巨核球に伝わること、すなわち、血小板VEGFの抗原量の評価が骨髄機能の評価につながることの当初の仮説を裏付けることができた。肝再生のシグナルが血小板の形質を変化させて、肝産生・組織修復に適した血小板への形質転換を促すことの発見は意義深いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの病態における血小板検体からのアプローチは順調に進捗し、血小板生理活性ペプチド定量測定による骨髄環境予測と横断的病態検査への応用展開に相応しい展開がなされたと考える。今後は、基礎研究からのアプローチとして、ヒトにおける血小板VEGF-Aの病態関与への考察を深めるために血小板特異的VEGF-A発現マウスの作出と解析を検討する。既にCAG-loxP-EGFP/CAT-loxP-human VEGF-Aの遺伝子を導入したマウス(hVEGF-Afl)を作出済みであり血小板特異的なプロモーターによるCre発現マウスとの交配により血小板特異的VEGF-Aの発現は可能である。hVEGF-AflがCre発現マウスとの交配により組織特異的にVEGF-Aを発現することは既にJ Immunol.2010 に報告しており実証済みである。
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