研究課題/領域番号 |
25293137
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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研究分担者 |
松村 伸治 関西医科大学, 医学部, 講師 (70276393)
西田 和彦 関西医科大学, 医学部, 助教 (80448026)
矢尾 育子 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60399681)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多光子励起顕微鏡 / 脊髄後角 / 神経回路網 / in vivo / トランスジェニックマウス / 皮膚刺激 / Ca2+応答 / 形態変化 |
研究概要 |
本研究では末梢組織からの感覚入力が脊髄後角の神経細胞ネットワークでどのように情報処理され、上位中枢に出力されるかを明らかにするために、形態観察用の蛍光タンパク (GFP) だけでなく機能解析用のCa2+センサー蛍光タンパクを脊髄後角神経細胞に発現させたマウスを用いて平成25年度の研究実施計画1)~3)にそって、多光子励起顕微鏡を用いた研究を実施し、以下の成果がえられた。 1)Ca2+センサー蛍光タンパクを子宮内遺伝子導入法を用いて発現させたトランスジェニックマウスを作製し、皮膚での熱、触、機械的刺激にCa2+応答する脊髄ニューロンとそのネットワークを多光子励起顕微鏡を用いてin vivoで解析を行った。その結果、多光子励起顕微鏡下に1回の皮膚刺激により応答する細胞が数10個同時に観察され、脊髄後角での刺激応答図が作成できた。 2)神経特異的にYFPを発現するトランスジェニックマウス(thy1-YFP)で炎症性疼痛モデルを作製し、神経ネットワークの変化を形態学的に解析を行い、皮下の炎症直後から脊髄後角神経回路にある樹状突起上に新たなスパイン様構造が形成されること、炎症性疼痛モデルの多光子励起画像でシナプス数が経時的に増加すること、AMPA型、NMDA型グルタミン酸受容体いずれの拮抗薬でもその経時変化が抑制されることを明らかにした。 3)露出した脊髄後角に生理活性物質PGE2で直接刺激して、皮膚刺激による応答を修飾することを明らかにした。一方、抑制性神経伝達物質の受容体拮抗薬を投与すると脊髄後角の神経細胞の応答が増大することから、健常状態における皮膚刺激の上位中枢への伝達の第1中継地脊髄後角での痛覚伝達、大脳皮質での痛覚認識の解析の系が確立できた。 さらに、4)Ca2+センサー蛍光タンパクを発現するトランスジェニックマウスを作製した。 以上のように研究計画にそって、順調に進んでいると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度実験計画の(1)~(3)は予定通り実験が実施され、成果が得られた。(5)の痒みモデル動物系を数種類作製して確立しつつある。(4)の脊髄後角ニューロンとDRGニューロンの共培養系の実験は、現時点では開始できていない。 平成25年度実施計画(1)~(5)の4項目が達成できていることからおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)脊髄ニューロン、興奮性あるいは抑制性介在ニューロン特異的Creマウスと交配して、標的ニューロン特異的に蛍光タンパクを発現するマウスを作製する(西田) 2)YCnanoを発現するトランスジェニックマウスを用いてグルタミン酸、PGE2、ATPなどの神経伝達物質や生理活性物質を直接刺激して神経ネットワークを機能的に解析する(西田、松村) 3)脊髄ニューロン、興奮性あるいは抑制性介在ニューロン特異的に蛍光タンパクを発現するマウスから脊髄後角ニューロンあるいはDRGニューロンを調製して共培養系で解析する(松村)
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画は研究実績概要に記載したように、順調に進捗しているが、使用額が生じた主な理由は研究支援者の雇用費として当初予定していた額が十分使用できなかったため。 26年度の研究支援者の雇用、および海外からのレポーターに用いる遺伝子改変動物の購入が遅れているので、その購入費用として26年度に使用する予定である。
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