研究課題
[川崎病巨大冠動脈瘤合併症例の遺伝学的解析]平成26年度末までに全エクソーム解析を実施した6例に加え、34症例の収集に成功した.これらのうち、31例に対し新たに全エクソーム解析を実施した.合計37名について得た遺伝子のタンパクコード領域およびエクソン周辺のイントロン領域の塩基配列について参照ゲノム配列と異なる部位をリストアップした.続いてdbSNP, 1000genomes, ESP6500等の公共データベースおよび研究協力機関独自のデータベースにおいて頻度が0.03%以上とされているものを除外した.さらにタンパクコード領域内の非同義置換、翻訳時の読み枠のずれを生じる挿入/欠失、エクソン・イントロン境界部の保存された塩基配列内の変化のみを抽出し、集団内において非常に稀であり、かつ遺伝子機能に影響をもたらす可能性の高い変化がみられた遺伝子のリストを患者毎に作成した。このようにして見出された遺伝子は合計2357であり、そのうち3名以上に共通であった48遺伝子に焦点を当て,変異の実在をサンガーシークエンス法にて確認する作業を行っている.[川崎病頻回罹患例家族の遺伝学的解析]川崎病頻回罹患症例を含む罹患者2名、非罹患者1名、両親からなる5人家族のうち平成26年度末の時点で未収集であった1名から協力を得ることが出来た.この家族のうち既に全ゲノムシークエンス解析が終了していた1名を除く4名と、川崎病頻回罹患の孤発例1名の計5名について新たに全ゲノムシークエンス解析を実施した.これまでに解析済みの1家系と同様の手順にて原因の候補となる遺伝子変異を抽出した.
3: やや遅れている
平成26年度末までに解析が終了した川崎病巨大冠動脈瘤症例6例に加え,収集が終了していた20例の全エクソ-ム解析を4月に実施の予定であったが,試料収集が軌道に乗り追加が見込めたことと,研究協力機関の他業務による多忙,作業の効率の理由から開始が4ヶ月遅延した.解析症例数が多いほど,原因遺伝子の特定には有利であるため試料収集をその間継続し,8月までに収集し得た31例を解析した.また12月に研究協力機関である理化学研究所において技術職員の退職があったため,2-3ヶ月を予定していた候補遺伝子変異のサンガーシークエンス法による確認が遅延している状況である.
巨大冠動脈瘤症例の全エクソーム解析において見出された候補遺伝子のうち機能的意義が大きいと予想される変異や稀な多型が3症例以上に共通してみられた遺伝子を優先し,それらが実在することのサンガーシークエンス法による確認を進める.この確認作業の後,候補遺伝子の多くが含まれる分子パスウェイを検索し,パスウェイ上の他の遺伝子も含め川崎病の重症化に関するSNP関連解析を実施する。頻回再発例の全ゲノムシークエンス解析についてはエクソン周辺の一塩基置換および挿入欠失を抽出し、機能的意義の予測を行った後,2家系の各罹患同胞対,1名の孤発頻回罹患症例が共通して変異が見られる遺伝子を検索する。これらについてもサンガーシークエンス法による確認を進める.続いて,候補として見出された遺伝子について先に実施したゲノムワイド関連解析に結果を参照し,そのSNPと一般の川崎病集団における罹患感受性の遺伝的背景因子となっている可能性を探る.川崎病の重症化あるいは罹患感受性との関連が見出されたSNPに関し、遺伝子機能への影響をin silicoで予測,またin vitro実験にて検証する.また海外の共同研究者とともに,人種を超えた川崎病の共通遺伝的リスク因子である可能性について検討する.最後に本研究で得られた知見を取りまとめ,学術雑誌や学会等で報告する.
研究協力機関の他業務による多忙と,作業効率の理由により全エクソーム解析の実施が遅れたこと,さらに技術職員の退職があり,27年度に予定していた候補遺伝子変異のシークエンス確認が遅延した.そのため,その後に予定していたパスウェイ解析による川崎病重症化関連遺伝子群の候補選出と遺伝子内のSNPと川崎病患者集団内での重症化傾向との関連解析が次年度に持ち越された.
次年度使用額147万円のうち、100万円を本年度に持ち越された候補遺伝子変異のシークエンス確認、SNPの関連解析に必要な試薬等の購入に充てる.国内外の学会参加の旅費および参加費用に30万円,論文投稿時の英文校正および投稿料に17万円を充てる予定である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
PLOS ONE
巻: 11 ページ: e0145486
10.1371/journal.pone.0145486.
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160121_1/