研究課題
基盤研究(B)
感染症および慢性炎症は発がんにおいて重要な役割を果たすと考えられる。炎症により傷害された組織の再生の際に幹細胞が活性化され、炎症由来の活性酸素や活性窒素種によりDNA損傷を受け、突然変異の蓄積やゲノム不安定性が生じ、発がんに至る(Oxid. Med. Cell Longev. 2013:387014, review)。我々はタイ肝吸虫感染胆管細胞癌周辺の組織において、幹細胞マーカー陽性細胞に酸化的DNA損傷が有意に高いことを見いだし(Free Radic Biol Med. 65:1464-72, 2013)、炎症関連発がんの機序のひとつを明らかにした。エピゲノム異常は感染や喫煙、食餌性因子などの環境因子が形質発現に対し可逆的に作用することが報告されている。ハムスターを用いたタイ肝吸虫感染胆管癌モデルにおいて、メラトニンを用いたDNA損傷への化学予防の効果について検討を行った。その結果、がん抑制効果を見いだし、プロテオミクス解析により発がん機構へのミトコンドリアの関与を示唆するデータを得ている。また、メラトニンはヒト胆管癌培養細胞に対してミトコンドリアのDNA酸化損傷を介した細胞死を誘導することを明らかにした(論文作成中)。タイ肝吸虫感染胆管癌患者の手術標本からDNAを抽出し、メチル化DNAを濃縮し、次世代シークエンサーによりDNAメチル化異常を解析し、幹細胞マーカー陽性細胞との関連を検討中である。炎症起因性物質であるアスベストを曝露したマウスの肺組織におけるmicroRNAの発現を解析し、その影響を解析中である(日本産業衛生学会東海地方会にて発表、2013年10月)。また、喫煙・飲酒がハイリスクとなる頭頸部癌におけるmicroRNAの発現変動を検討し(第72回日本癌学会総会にて発表、2013年10月)、バイオマーカー候補を探索中である。
2: おおむね順調に進展している
寄生虫感染による癌の発症・進展におけるゲノム・エピゲノムの変化を解析し、化学予防剤の効果を検討している。また、炎症起因性繊維状物質や生活環境因子によるmicroRNAへの影響を解析中である。総説および原著論文を国際学術雑誌に発表し、さらに現在、論文作成中である。したがって、おおむね順調に研究計画は進展していると考える。
当初の計画に従い、研究を推進する予定である。
学外分担者が予定していた学会に参加できなかったため。学外分担者が旅費として使用する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件)
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