研究課題/領域番号 |
25293155
|
研究機関 | 独立行政法人労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
澤田 晋一 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, その他部局等, 特任研究員 (00167438)
|
研究分担者 |
時澤 健 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, その他部局等, 研究員 (00454083)
永島 計 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40275194)
奥野 勉 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, その他部局等, その他 (90332395)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 熱中症 / プレクーリング / 送風スプレー / 手足浸水 / 暑熱ストレイン / 軽減手法 / 直腸温 / 脱水 |
研究実績の概要 |
扇風機およびスプレーを用いた身体冷却による暑熱ストレインの軽減効果をこれまでに検証してきたが、その方法と効果にある程度の目途が立ったため、異なる身体冷却の方法と組み合わせることで効果が大きくなるか否かを検証した。健常成人男性9名を対象に、室温28℃(相対湿度40%)に設定した人工気象室において、スパッツ1枚で身体の前面に扇風機による送風(4m/s)およびスプレーによる水の塗布を行いながら、両手両足を18℃の水に30分間または15分浸水させた。その後、防護服と全面マスクを着用し、室温37℃(相対湿度50%)の別室へ移動し、2.5km/hのトレッドミル歩行を1時間行った。冷却を行わないコントロール(CON)試行において、暑熱下歩行により直腸温は約1.2℃上昇したのに対し、30分のプレクーリング(PC30)試行では約0.6℃と低値を示した。これは手足の浸水単独の効果と同程度であった。15分のプレクーリング(PC15)試行では約0.8℃とCON試行と比べて低値を示したものの、PC30試行より高値であった。胸部の発汗率および体重減少率においても、PC30試行、PC15試行、CON試行の順で小さかった。PC30試行における脱水の低減率は、手足の浸水単独の効果の2倍認められた。温度感覚、温熱的不快感、疲労感、口渇感、および蒸れ感については、CON試行と比べてPC30およびPC15試行の方で低値を示し、それらの低減率は手足の浸水単独の効果と同程度であった。クーリング時間の影響は認められなかった。深部体温上昇の抑制には、手足の浸水によるプレクーリングが有効であり、送風スプレーを併用することは全身の皮膚温低下を引き起こすことで発汗を抑制し、脱水を大きく軽減させることが明らかとなった。クーリング時間の短縮は、生理的負担の軽減を弱めてしまうが、心理的負担の軽減については効果を保持する可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工環境室でのプレクーリングによる暑熱ストレイン軽減モデル構築の被験者実験は比較的順調に進展しているが、その実験成果を現場に応用展開する調査研究が大幅に遅れている。その理由は、現場作業者に実験室実験で構築しつつある手法を導入する現場の協力と選定が困難なためである。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで実施してきた被験者を対象とした送風ファンによる暑熱ストレインの軽減方策の実験に追加して、今後は送風ファンによる暑熱環境を対象とした暑熱ストレス軽減方策の実験室実験を実施する。すなわち、夏季の建設作業現場を模擬した様々な暑熱条件を人工環境室で再現して、送風ファンによるWBGT指数の低減効果を検討し、送風ファンによる暑熱環境ストレス低減モデルの構築と最適化を図る。さらに、これらの暑熱ストレス・ストレイン軽減モデルを実際の夏季作業現場に導入してそれらの有効性と適用限界を検証し、最終的に送風ファンによる作業管理手法を作業マニュアルを通じて提案することを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度までに実施してきた被験者を対象とした暑熱ストレイン軽減モデル構築の追加実験を重点的に行ったが、その成果を現場へ導入する研究ができなかったためである。それは、対象現場の選定がうまくいかずに現場調査まで研究を展開できなかったことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は、これまで構築してきた被験者を対象にした送風による暑熱ストレインの軽減モデルのさらなる実験的検証と現場導入の検討を行うとともに、現場での協力が得られやすい送風によるWBGT指数を指標とした暑熱環境ストレス軽減モデルを構築するための実験室での検証実験と現場での有効性評価の実験を新たに追加する。これにより、送風による暑熱ストレス・ストレイン軽減モデルの確立と現場への導入と検証を行うために使用する。
|