研究課題/領域番号 |
25293156
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
藤原 佳典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (50332367)
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研究分担者 |
斉藤 雅茂 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (70548768)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会的孤立 / 地域包括ケア / 孤立予防 / 健康アウトカム |
研究概要 |
研究1の調査(第2回調査)は、2013年8月に大田区大森地区の高齢者7,696人を対象として実施した。有効回答は5,185票(67.4%)であった。第1回調査と第2回調査の両方に回答した1,184人を分析対象者とした。回答者の社会的孤立状況や居住形態(実質独居か名目独居か)とADLおよび精神的健康状態の因果関係を検討した。社会的孤立状況、居住形態と、第1回調査(2011年)から第2回調査(2013年)の間の老研式活動能力指標およびWHO-5の得点変化を変数とした共分散構造分析を行った。結果、孤立していることは老研式活動能力指標(標準化係数:-.097;p<.001)とWHO-5(標準化係数:-.077;p<.01)の両方の変化に負の影響をもたらしていることが明らかになった。一方で、居住形態は、それだけではADLや精神的健康状態に影響していないことが明らかになった。高齢者の社会的孤立と健康アウトカムの関連を追跡調査により提示できた意義は大きい。 研究2の調査は、2013年10月から2014年4月にかけて、大田区A地域包括支援センターの窓口で実施した。対象者は、見守りキーホルダーの登録もしくは更新に来た高齢者とした。見守りキーホルダーの登録・更新時に地域包括支援センターの職員から調査協力の依頼をし、同意を得られた人に調査票への回答を求めた。84人(登録36人、更新38人)から回答を得た。新たに見守りキーホルダーの登録に来た人は、これまで地域包括支援センターを利用したことのない人が大半であり、見守りキーホルダーをきっかけに地域包括支援センターの存在を知った人が37.1%いた。見守りキーホルダーは地域包括支援センターの周知を進め、孤立を防ぐツールともなっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1の当初計画では、東京都大田区大森地区65歳以上計6,000人(第2回大田区調査)および東京都板橋区大山地区65歳以上1000人を対象にアンケート調査を実施する。大山地区調査では、集会式健診により認知、心理、身体機能の測定も行う、としていた。東京都大田区大森地区での調査は、対象者7,500人以上の規模で実施することができた。板橋区大山地区の調査でも計画通りの人数、項目の調査を実施することができた。分析方法として、①個人レベル:共分散構造分析を用いて、個人の属性・特徴により、「社会的孤立の状況や意向」がどのように健康アウトカム(ADLや抑うつ等)に関連するかを説明する「孤立-健康関連モデル」の作成、②地域レベル:マルチレベル多変量解析を用いて、個人要因を除去後の、地域レベルの孤立やソーシャル・キャピタルと健康アウトカムの関連の分析を計画していた。個人レベルの分析については、サンプル数の多い大森データを用いて行った。高齢者の社会的孤立と健康アウトカムの関連を追跡調査により提示することができた。地域レベルの分析については、現時点で2地域のデータしかないため、今後より多くの地域データを収集したのち、実施することとした。 研究2の当初計画では、見守りキーホルダーの登録・更新希望者への簡易版聞き取り調査と当該地域包括職員を対象とした半構造化面接調査を実施することを計画していた。見守りキーホルダーの登録・更新希望者に対しては、2013年10月以降、調査を継続しており、今後も継続予定である。地域包括職員を対象とした半構造化面接調査については未実施であるが、今年度に実施することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの成果の中で課題として残った、社会的孤立の状況と健康アウトカムの関連についての地域レベル分析および、地域包括職員を対象とした見守りキーホルダーに関する半構造化面接調査を実施するにあわせて、当初計画通り、下記の研究を実施する予定である。 研究1では、社会的孤立と健康アウトカムに関する東京都大田区大森地区のコホート第2回調査の総括と第3回調査の準備を行う。また、当該地区での死亡者の死因情報を把握することにより、第1回調査以降の死亡者に関する死因情報を把握する。また、区・地域包括職員等現場関係者とWGを開催し、第2回調査の結果について、重層的な孤立予防の枠組みを踏まえて考察する。 研究2では、大森地区に限定せず、大田区全域の地域包括支援センターを対象に、見守りキーホルダーの登録・更新状況の実績および大森以外の地区の地域包括支援センター職員への面接調査を行い、大森地区での知見との相異を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
健診時の対象者の移動する動線が混乱し、誘導員や調査員の増員、健診期間の延長を行い、当初予定以上に雇用人数・日数が増加したため、基金分の前倒し支払い請求を行った。その際、併せて作業手順の見直しを行ったため、健診の事後処理に費やす作業量が減り、その作業のための雇用日数が減った為。 研究計画書に記載したとおり、第2回調査の際の人件費として使用する予定である。
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