研究課題
手術中の術者の疲労やストレス状況の評価に関してはこれまで極めて限られた知見しか得られていない.本研究は,術者の生体情報,音声,動作などから,これらを客観的に測定する方法がないかどうかを検討した.生体情報に関しては,循環系は変化が乏しく,発汗は,イベントによっては発汗量の増加が認められたが,長時間測定がむずかしく迅速なフィードバックもむずかしいことがわかった.音声に関しては,手術中に術者の音声を記録し,音圧,音声周波数を取得した.周波数解析は,一定幅で高速フーリエ (FFT)解析を行い,第1フォルマントすなわち最大のパワー(Max Power)と,最大のパワーを示す周波数(第1フォルマント周波数)を算出し時系列に並べた.また,音節解析は一定時間の音圧波形からRoot-mean-square (RMS)を算出し時系列に並べ, 1回の発語の中の音節数(話す早さを反映)や発話率を求めた.以上のような時系列データと,手術ビデオと比較して関連を検討した.ストレス状況下では通常時にくらべてMax Powerと第1フォルマント周波数の両者が高値のプロットが多い(強く高い音声が多い)傾向を得た.疲労に関しては周波数上の特徴は見られなかったが,音節解析で会話が遅く,発話率が少ない傾向が見られた.動作解析は,術者の肩,肘,手関節部の3箇所にマーカーを貼付して録画し,画像からマーカー部分の動きを切り出して右上肢運動の加速度を時系列で求めた.疲労とともに加速度が落ちるのではないかと想像していたが,ほとんど変化が無く,加速度以外の因子がないか検討を続けている.以上から,手術中の術者の疲労やストレス状況の測定に関しては,音声の解析が実際的で有用とわかった.これらのパラメータは計算能力を向上させれば手術時に計算することが可能で,手術時にフィードバックするシステムにつながると考えられる.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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