研究実績の概要 |
本研究の目的は,最新の遺伝子解析技術(454-pyrosequencing法)を利用して,水中死体の肺及び血液中に存在する多様な微生物を網羅的に解析し,溺死の診断に役立てることである. 平成27年度は,溺死ないし溺死の可能性が高い事例として,17例73試料(淡水域5例, 23試料;汽水域4例, 18試料;海水域8例, 32試料),また非溺死例(ないし極少量の水を吸引した可能性がある事例)として,9例26試料を調査した.方法としてはまず肺組織は0.2 g,血液試料1 mLをステンレスビーズ(ないし金属クラッシャー)を用いて物理的に細胞を破壊した.次いで,Proteinase K及びSDSを用いてさらに組織を化学的に溶解し,次いでシリカメンブレン法によってゲノムDNAを精製した.続いて,得られたゲノムをテンプレートして,MIDプライマーを用いてPCRを行った.これらのPCR産物はアガロースゲル電気泳動後,目的のバンドを切り出し精製した.さらに,qPCRおよびemPCRを行った後,Roche GS Juniorでシークエンスを行った.今後得られたデータを詳細に解析し、これらの結果をまとめ,国際誌に投稿する予定である.なお,すべての事例について,従来の強酸(発煙硝酸)を用いた珪藻の検出を行った(左右の肺,腎臓,肝臓).さらに,全ての事例について,選択平板培地を用いて,血液試料(左心血,右心血,大腿静脈血)中の生菌の検出・同定を行った. また,溺死に関する本研究を進めいく上で,珪藻の検査は必要不可欠であるが,従来の珪藻検査は,非常に煩雑で、特に発煙硝酸を用いるため危険も伴う.そこで我々はこれに代わる珪藻を検出するための検査法の確立は本研究を遂行していく上でも急務と考え,酵素(Papain)を用いて諸臓器から珪藻を安全かつ簡便・迅速に検出可能な方法を開発した.今後,これらの結果もまとめ,国際誌に投稿する予定である.
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