研究課題
ヘリコバクター・ピロリ菌は日本人の約半数に感染が見られる、最も頻度が高い病原性細菌の一つである。我々は全ゲノム関連解析によってピロリ菌によって生じる疾患発症にPSCAの遺伝子多型が深く関与することを明らかとした。しかしながら、これらの遺伝子の違いが疾患の発症を制御する分子メカニズムはまだ十分に明らかになっていない。本研究では、全ゲノム関連解析や候補遺伝子解析によるピロリ菌関連疾患感受性遺伝子の同定と、ピロリ菌感染者における疾患発症リスク予測システムの構築を目指す。またPSCA遺伝子多型による胃癌、十二指腸潰瘍発症の制御機構の解明、さらにはPSCAが癌治療の標的となりうるかについて検討をすすめていく。平成27年度までに、PSCA多型が胃潰瘍及び膀胱がん、肺がんの発症に関わる事を明らかとした。また血中PSCAの測定系を構築し、がん患者において血中PSCAが高値となることを示した。平行して個別化医療の実践を目指し、内視鏡検査を受診した患者の血液由来のDNAおよび生検組織の収集を進めており、これまでに400名分の試料が収集された。内70名を超える患者では除菌後の試料も収集しており、組織からのRNA及びDNAの精製を終了した。これまでの約350例の解析結果から、胃粘膜組織におけるPSCAの発現とPSCAの遺伝子多型が関連を示すことが明らかとなった。さらにコントロール群とピロリ菌感染群、除菌前と除菌後の組織における発現解析の結果、PSCAの発現がピロリ菌感染によって低下し、除菌後に上昇すること、また胃がんのリスクが高いTT型genotypeを持つ人では顕著に上昇することが明らかとなった。この結果より、胃がん組織においてPSCAの発現低下はピロリ菌感染に依存すること、また除菌後も胃がんのリスクが高くなるのはPSCAの発現上昇が寄与していると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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