研究課題
平成26年度においては自然免疫反応受容体であるNOD1の活性化とcholecystokinin受容体の活性化を用いた慢性膵炎モデルの解析を進め、以下の事実を明らかにすることができた。1) NOD1欠損マウスとI型IFN受容体欠損マウスを用いた検討により、慢性膵炎の発症にはNOD1を介するI型IFN経路の活性化が重要な役割を果たしていることが判明した。2) NOD1欠損マウスと野生型マウスを用いた骨髄キメラマウスを作成することにより、慢性膵炎の発症には膵臓腺房細胞に発現するNOD1の活性化が重要であることが判明した。3) I型IFN受容体欠損マウスと野生型マウスを用いた骨髄キメラマウスを作成することにより、慢性膵炎の発症には血球細胞あるいは非血球細胞におけるI型IFN経路の活性化が重要であることが判明した。4) 慢性膵炎マウスの膵臓における液性因子を網羅的に測定することにより、NOD1の活性化とcholecystokinin受容体の活性化によって、膵臓内にIL-33、IFN-beta、TGF-beta、IL-6、CXCL10、CXCL9、 IL-13の発現が上昇していることを見出した。NOD1欠損マウスとI型IFN受容体欠損マウスではこれらの液性因子の発現が低下していた。5) T細胞を欠損するRAG1欠損マウスではNOD1の活性化とcholecystokinin受容体の活性化を用いた慢性膵炎モデルが誘導されず、慢性膵炎の発症にはT細胞が必要であることを見出した。以上の解析により、膵臓腺房細胞におけるNOD1の活性化がI型IFN経路を誘導し、IL-33-IL-13経路を活性化することにより、慢性膵炎を発症させるという機序の存在が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
自然免疫反応受容体であるNOD1の活性化とcholecystokinin受容体の活性化を用いた慢性膵炎モデルの解析を進め、NOD1-IFN beta-IL-33-IL-13という膵炎の発症に関わる一連の膵炎惹起性分子の候補にたどり着くことができた。ただし、膵炎惹起性腸内細菌の同定には至っていない。
自然免疫反応受容体であるNOD1の活性化とcholecystokinin受容体の活性化を用いた慢性膵炎モデルの樹立に成功したので、本モデルを用いて,慢性膵炎の発症に重要な役割を果たす因子の同定を目指したい。膵臓腺房細胞におけるNOD1の活性化がI型IFN経路を誘導し、IL-33-IL-13経路を活性化することにより、慢性膵炎を発症させるという機序の存在が示唆されたので、IL-33とIL-13の役割について、検討を進める。1) IL-33欠損マウスあるいはIL-33受容体であるST2抗体の投与が慢性膵炎の発症に及ぼす効果について、検討を進める。2) IL-13については腸管や肺において、線維化に重要な役割を果たすことが知られている。IL-13の中和抗体の投与が慢性膵炎における線維化にどのような効果を及ぼすのかを検討する。さらに、IL-13の産生細胞についても同定を試みる。以上の取り組みにより、NOD1-IFN beta-IL-33-IL-13という膵炎の発症に関わる一連の分子の役割を明らかにするとともに、自然免疫反応の制御を用いた膵炎の新規治療法について提案することを目指す。
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Mucosal Immunology
巻: 7 ページ: 1312-1325
10.1038/mi.2014.19