研究課題
基盤研究(B)
肥満においては脂肪組織で蓄積できなくなった過剰脂質は遊離脂肪酸として血中に存在し、肝臓や筋肉、膵島など異所性脂肪蓄積をきたすとともにインスリン抵抗性を悪化させ、内皮細胞や膵島β細胞のアポトーシスを惹起して異常病態をおこすことからlipotoxicityと総称され近年生活習慣病の根幹をなす病態として注目が集まっている。非アルコール性脂肪肝炎の発症にはこのlipotoxicityの関与が重要と考えられており種々の証拠が提示されているがいまだ十分に解明されたとは言い難い。大腸菌由来のエンドトキシンであるLPS (lipopolysaccharide) はマクロファージ上にあるLPS共受容体CD14に結合することで自然免疫系受容体であるTLR4が認識できるようになり、その結果炎症性サイトカインが産生される。一方、飽和脂肪酸もTLR4を活性化してサイトカインを産生させ脂肪組織におけるインスリン抵抗性の病態異常に強く関与していることがin vivoで血管内に脂肪酸を持続注入する検討などで近年明らかにされてきた。in vitroの研究では脂肪酸投与は肝細胞に速やかに細胞内脂肪蓄積をおこし、JNK (c-Jun N-terminal kinase)を活性化して肝細胞のアポトーシス感受性を亢進させ肝細胞死を誘導することが示されている。しかしながらNASHの研究では糖尿病領域のような体内に脂肪酸そのものを投与するようなin vivoでの証拠はない。肝臓への脂肪酸の経静脈投与で生じる肝障害の解析をマウスに経静脈的にパルミチン酸等の脂肪酸を持続投与してin vivoでの脂肪酸の肝臓への影響を肝機能異常、apoptosis、サイトカイン、JNK, NF-kBなどの分子病理学的解析を現在行っている。
2: おおむね順調に進展している
モデルの作成に成功しており、解析を行うところまで来ているため。
確立したモデルにおいて、脂肪酸投与での炎症が惹起されるか、その機序は何かを検討する予定。
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PLoS One
巻: 8 ページ: e65211
10.1371/journal.pone.0065211