研究課題
[目的]飽和脂肪酸はin vitroで肝細胞アポトーシスを起こし,非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)病態に関与するとされる.しかしin vivoでの単一飽和脂肪酸の肝臓への影響を検討した報告はない.今回,飽和脂肪酸であるパルミチン酸単独が引き起こす肝臓への影響について検討した.シグナル経路は自然免疫を惹起するパターン認識受容体のTLR4経路に着目した.[方法] C57BL/6J野生型マウス,TLR4KOマウス,高脂肪負荷マウスに右内頸静脈よりカテーテルを挿入後,乳化パルミチン酸を投与した.[結果] 短期投与モデルでは,パルミチン酸投与群の肝臓でALT上昇を認めずともαSMA領域上昇と,cxcl2・ccl2を介した好中球エラスターゼ・F4/80陽性細胞浸潤を認めた.In situ hybridization,初代培養肝細胞,clodronate liposomes投与の検討でcxcl2は肝細胞,ccl2はKupffer細胞から発現すると示唆された.長期投与モデルではαSMA発現の上昇と肝線維化を示した.TLR4 KOマウスでは各種変化はキャンセルされる傾向にあった.高脂肪食負荷マウスでは血中endotoxinの上昇を認め,パルミチン酸投与のみでALTの上昇と線維化シグナルの増強を認めたが,腸管滅菌後では,パルミチン酸投与によるALT上昇はキャンセルされた.一方,普通食負荷マウスではパルミチン酸+LPS投与で,各々の単独投与に比較して好中球とマクロファージの相乗的増悪効果によりALTが上昇することを,炎症細胞を除去して解析した.[結語] 今回,in vivoで単一飽和脂肪酸の影響を評価するマウスモデルを確立した.パルミチン酸単独投与がTLR4経路を介した自然免疫応答により炎症細胞浸潤および肝線維化というNASH病理像を呈し,また,パルミチン酸が血中エンドトキシンと相互作用を持つことを示した.この機序の解明が,NASHにおける自然免疫を介したlipotoxicityの解明につながると考える.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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