研究課題/領域番号 |
25293177
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
河田 則文 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30271191)
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研究分担者 |
田守 昭博 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30291595)
榎本 大 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20423874)
LE THUY 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10572175)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サイトグロビン / 肝硬変 / 肝癌 / 線維芽細胞 / 動物モデル |
研究概要 |
我々は哺乳類第4番目のグロビンであるサイトグロビン(Cytoglobin, Cygb)の生体内機能を明らかにする目的でCygb遺伝子のExon 1をネオマイシン耐性遺伝子で置換してCygb欠損マウス(Cygb-/-)を作出した。ジエチルニトロサミン(diethylnitrosamine, DEN)25 ppmを4~6ヶ月投与した肝臓の発癌実験において、野生型Cygb+/+では20%のマウスに肝腫瘍が発生したのに対して、Cygb-/-マウスでは100%で肝腫瘍(肝癌や肝血管腫)または肺腫瘍(扁平上皮癌や腺癌)が生じていることを確認した。0.05 ppmという低濃度でも同様の傾向であった。肝臓にはシリウスレッド染色でコラーゲンの沈着がCygb-/-マウスで強く生じていることが判った。また、α-fetoprotein, interleukin-1, transforming growth factor-βのmRNA発現が亢進していた。この様な現在までの知見から、Cygb欠損は臓器の酸化ストレス制御を破綻させ細胞の癌化に寄与する可能性を見出してきた。一方、コリン欠乏食(CDAA食)を投与してヒトのnon alcoholic steatohepatitisに類似するモデルを作製し、Cygb-/-マウスと野生型マウスで比較したところ、CDAA食投与後16週間において、Cygb-/-マウスでは線維化が高度に発達していた。これには炎症細胞の浸潤や酸化ストレスの亢進が関与することが示唆された。32週間まで投与を継続すると、野生型マウスでは炎症反応と軽度の線維化が見られる程度であるが、Cygb-/-マウス肝臓は萎縮し、100%のマウスで腫瘍形成が見られた。この背景として、Cygb-/-マウス由来の星細胞は活性化しており、O2-やケモカイン産生がup-regulateされていることを見い出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作出したCygbノックアウトマウスを用いてその易発がん性を世界で初めて見出し、Am J Patholに出版することができた。さらにヒトの病態に近いCDAAモデルでも肝臓の腫瘍形成を確認しており、Cygb欠損が肝臓の炎症、線維化、さらには腫瘍形成が促進されることを確認した。これらの詳細なデータは論文にすべく、現在執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
Cygbノックアウトマウスを用いてジエチルニトロサミンという発癌剤での腫瘍形成について検討し、また、CDAAによる脂肪性肝炎というよりヒトの病気に近いモデルでの検討をほぼ終了した。また、ヒトの肝癌組織におけるサイトグロビン発現の様態や、遺伝子変異についてもデータを得られつつあり、さらに研究を継続する予定である。
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