研究課題/領域番号 |
25293180
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
永井 敏雄 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00334194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心筋前駆細胞 / DNA傷害 / 細胞移植床 / 心筋再生 / パラクライン効果 |
研究実績の概要 |
自己組織化ナノペプチドを用いたSca-1陽性心筋前駆細胞移植床の心膜腔内移植方法による急性心筋梗塞モデルマウスに対する効果のメカニズムについて、パラクライン効果と心筋再生促進効果の両者から解析した。自己組織化ナノペプチドハイドロゲル心筋前駆細胞移植床は、平面で培養された心筋前駆細胞とほぼ同レベルの、また、同様の自己組織化ナノペプチドハイドロゲル内で培養した心筋線維芽細胞より多くのvascular endothelial growth factor、junctional adhesion molecule-A、soluble vascular cell adhesion moleculeを分泌していた。従って、3次元培養環境に適応した心筋前駆細胞からの持続的なパラクライン効果が、本移植モデルの血管新生、細胞死抑制、梗塞部位への白血球遊走抑制効果において重要であることが示唆された。次に、genetic fate mapping法を用いた新生心筋標識マウスを用いて、Sca-1陽性心筋前駆細胞移植床により、既存の心筋細胞に対する新生心筋細胞の比率が有意に増加し、BrdU陽性新生心筋細胞が増加する傾向にあることを定量的に確認した。次に、Sca-1陽性心筋前駆細胞移植床を移植2週間後に、心臓幹細胞を単離し、DNA傷害のマーカーであるγH2AX foci数を定量したところ、非移植群に比較して移植群でDNA傷害が減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋幹/前駆細胞に対すDNA傷害に関して、心筋前駆細胞移植床を移植2週間後に心臓side population細胞を単離してDNA傷害マーカーについて検討し、細胞移植がDNA傷害を軽減する新たな知見を得た。また、genetic fate mapping法を用いた新生心筋標識マウスを用いて、心筋前駆細胞移植床により、既存の心筋細胞に対する新生心筋細胞の比率が有意に増加し、BrdU陽性新生心筋細胞が増加する傾向にあることを定量的に確認した。以上より当初の研究目標は概ね達成されたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
心筋前駆細胞移植床を移植4週間後に、心筋新生の多い部位からレーザーマイクロダイセクション方により採取した心筋組織からショットガン分析によりaldehyde dehydrogenase 2を同定したが、非移植群に比較して心筋前駆細胞移植床移植群で梗塞部に高発現していることをWestern blotting法により確認し、また、タモキシフェン誘導型多色標識マウスを用いて、正常マウスに比較して心筋梗塞モデルマウスで細胞分裂をした心筋細胞が増加していることを明らかする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年7月に、細胞移植CreLacZマウスの心臓に発現している蛋白を解析した結果、想定外にも、心臓幹細胞に保護的に作用する可能性のある蛋白を発見した。研究遂行上、細胞移植が心臓幹細胞の増殖を促して心筋細胞を作り出す可能性を考慮すると、本蛋白の心臓幹細胞への保護効果に付いて検討する必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
同定されたタンパクについて、心臓前駆細胞、心臓前駆細胞移植床を移植した心筋梗塞マウスの心筋での発現を確認する。本蛋白は活性化剤が存在するので、心臓前駆細胞に対する保護効果を確認する。
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