研究課題
本研究は、これまでに申請者らが行って来た遺伝性心筋症の病因となる遺伝子異常の同定と、それによる病態形成機序の解明に立脚して、心不全病態の治療・予防戦略を策定することを目的とした。ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素(PP1M)のスモールサブユニット(M21)を高発現するトランスジェニックマウス(M21-TGM)の肥大型心筋症様病態を詳細に検討したところ、心不全発症に先行して、筋原線維の錯走配列、Z帯の整合性異常、ミトコンドリアの増加などヒトの肥大型心筋症と同様の病理像が観察された。これとは別に、心筋症関連遺伝子67種類の全エクソンについて網羅的に変異を検索するシステムを構築し、これを用いて若年発症例を中心として原因変異の検索を行ったところ、明らかな家族歴がない症例でもその70%以上にサルコメア遺伝子変異などが検出されること、15歳以下の孤発例の約40%はde novo変異であることなどが判明し、とくに若年者では家族歴の有無によらず変異検索を実施することの有用性を明らかにした。また、7種の心筋症原因候補遺伝子の全エクソンについての変異検索を実施しており、健常者データベースには認められない変異を複数同定した。一方、激しいスポーツをする者には心肥大や心電図異常が観察されることがよく知られているが、このようなスポーツ心は機能性肥大であるとされており、病的肥大である肥大型心筋症とは異なる心肥大像であると考えられていたが、心電図異常を呈するスポーツ者102名についてMYH7, MYBPC3, TNNT2およびTNNI3の全エクソンの変異を検索したところ、うち5名にこれまでに肥大型心筋症関連変異として報告されている3種のミスセンス変異が検出された。さらに、in silico解析やスポーツ心者と同じ変異を有する肥大型心筋症家系の解析を合わせて実施し、これらの変異の病因論的意義を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度に計画したとおりの研究を実施したが、それに加えてスポーツ心臓者の遺伝子解析を実施するなど、より多くの研究を行えた。
心筋収縮のカルシウム感受性亢進が肥大型心筋症の病態形成の基本メカニズムであることを明らかにしたため、これを是正する手法が病態形成を抑制することについて、M21高発現マウスを用いてin vivoで明らかにする。また、候補遺伝子アプローチによっていくつかの新規原因遺伝子の候補を同定しているため、それらの機能解析を実施する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
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