研究課題/領域番号 |
25293185
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
江頭 健輔 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60260379)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 虚血再灌流傷害 / 急性心筋梗塞 / 再灌流療法 / ナノテクノロジー / ドラッグ・デリバリー・システム |
研究実績の概要 |
1.薬剤封入ナノ粒子製剤の製造、設計、最適化と有効性試験: 抗炎症作用や心筋細胞死抑制作用のあるスタチン、ミトコンドリア傷害を予防するシクロスポリン、PPARγアゴニスト(pioglitazone、irbesartan)、ARB(losartan)、などを用いた。梗塞サイズは通常通り心筋梗塞領域/虚血領域の比で評価した。心機能・心臓リモデリング・血管新生は超音波診断装置VEVO2100や小動物用CTスキャン装置を用いて評価した。分子標的造影剤 nanotrackerを用いて、matrix metaloproteinaseや血管内皮細胞、白血球などの分子イメージングを行い機序の解析と治療効果の判定を行った。 2.ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mitochondrial permeability-transition pore : mPTP)の開口の役割はミトコンドリアcytochrome Cの細胞質内leakageをWestern blottを用いて評価した。mPTP開口に必須の分子であるcyclophilin D欠損マウスを用いた。mPTP開口やミトコンドリア膜電位などの機能マーカーを用いて心筋細胞内ミトコンドリア機能傷害を明らかにした。 3.炎症細胞の役割はフローサイトメトリーを用いた活性化単球(Ly6c陽性)や修復性単球(Ly6c陰性)の解析やM1/M2マーカー解析を行った。摘出灌流心の実験によって炎症細胞浸潤の役割を明らかにした。 4.これらの成果から、「心筋虚血-再灌流部位選択的ナノDDSは虚血―再灌流傷害を抑制し梗塞サイズを縮小する」と言う仮説を証明できた(小動物における非臨床POC)。また、mPTP開口と炎症という2つの主たる機序に同時に介入することによって、梗塞サイズが格段に縮小するという画期的成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ピタバスタチン封入ナノ粒子製剤の小動物における有効性や薬物動態が明らかになったことを基盤にして、急性心筋梗塞症(ST上昇型 、非ST上昇型)に対する新しい治療法の実用化研究に繋がっている。即ち、橋渡し加速ネットワークプログラムの支援を受けて、九州大学病院ARO次世代医療センターのシーズBとして非臨床proof of concept取得(無麻酔覚醒ミニブタモデルにおける有効性試験)、臨床プロトコル作製、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に薬事戦略相談事前面談、治験薬製造、等を実施した。
シクロスポリン封入ナノ粒子製剤の有効性と薬物動態の成果を基盤にして、橋渡し加速ネットワークプログラムのシーズB(急性心筋梗塞や脳梗塞の虚血性臓器障害を格段に改善するナノDDSの実用化研究)として採択され、実用化に向けた非臨床試験を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究計画を予定通り進める。
本研究において得られた小動物における有効性を基盤にして、実用化に向けた非臨床試験(非臨床POC獲得など)と探索的臨床試験を加速的に推進する。
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