研究課題
基盤研究(B)
肺高血圧及び右心不全におけるTMEM100の機能的意義の解明を目的とした。まず成体の誘導型TMEM100cKOマウスの解析を進めた。通常飼育下ではcKOマウスは野生型に比して有意な肺動脈肥厚や右室肥大を認めなかった。そこで、肺高血圧の発症に重要な環境因子である低酸素で刺激を行いcKOマウスの肺高血圧や右心不全の程度を野生型と比較したが、これらの実験系でも両群間に肺高血圧や右室肥大の程度に有意差を確認できなかった。今後は、機序の異なる肺高血圧モデルであるVEGF受容体拮抗薬+低酸素刺激で検討を行い、両群間で表現型に有意な差がないかを確認する。TMEM100はファミリー蛋白を有さないユニークな膜タンパクである。IP-Mass Spectrometry法を用いて結合パートナーを探索し、IP3受容体やGRP78(シャペロン蛋白)などを同定した。そこで、小胞体ストレス応答やCa放出とTMEM100との関連を検討しTMEM100の分子機能を解明する事を計画した。血管内皮細胞にツニカマイシンやサプシガルジンなどの小胞体ストレスを加えるとTMEM100のmRNAやタンパク発現が著名に抑制された。また、その小胞体ストレス下では、GRP78とIP3受容体の結合が阻害され、Ca放出異常が起こることが分かった。小胞体ストレス時に発現抑制されたTMEM100がこれらの分子間結合に影響を与えたのではないかという仮説を検討している。TMEM100を欠損した内皮細胞の作成を行うためにTMEM100fl/flマウスの肺血管と対照となるコントロールから内皮細胞の樹立を試みたが困難であった。今後はsiRNAを用いて内皮細胞で効率よくTMEM100をノックダウンする方法を確立し、GRP78とIP3受容体の結合やCaイメージングを行う。モノクロタリン肺高血圧モデルラットの肺では小胞体ストレスマーカーが誘導され、かつTMEM100の発現が低下している。ヒト肺高血圧症の手術標本でも小胞体ストレスマーカーやTMEM100の発現を検討したが、現時点では一定の見解は得られていない。今後、検体数を増やして検討を行う。
3: やや遅れている
SPFマウスの感染に伴うクリーン化の必要性や成体マウスより初代内皮細胞を樹立する方法が困難であったため。
平成26年種々のヒト肺高血圧症におけるTMEM100の発現解析: 実臨床の観点からのどのようなタイプのヒト肺高血圧症例の肺動脈内皮でTMEM100の発現が減少しているかを検討する。肺サンプルは当大学呼吸器外科の肺がん病変部以外の肺をコントロールとし、京都大学呼吸器外科で実施される肺高血圧症の肺移植の際に摘出される様々なサンプルを比較する。定量的PCRおよびin situ hybridization法で評価する。また、その肺におけるTMEM100の発現量と右室圧データとの相関を検討する。平成27年誘導型TMEM100 cKOマウス、血管内皮特異的TMEM100 Tgラットおよび心筋特異的TMEM100 Tgラットおよびヒト肺高血圧例を用いた小胞体ストレス反応性: 平成25-26年度で得られた知見より小胞体ストレスが確認できたin vivo肺高血圧モデルのサンプルにおいて、TMEM100の発現量により小胞体ストレスでの反応性に違いがあるかを検討する。
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http://www.naramed-u.ac.jp/~1int/