研究課題
私たちは以前、機能不明の小膜タンパク質であるTmem100がBone morphogenetic protein (BMP)-ALK1受容体シグナル伝達系の新たな下流内皮遺伝子であることを報告してきた。また、Tmem100欠損(KO)マウスがALK1 KOマウスと酷似する心血管異常を示して胎生致死となることを報告し、Tmem100がBMP-ALK1受容体シグナル伝達系において重要な機能を有していることを提唱し、同系が関与していることが報告されている肺高血圧症におけるTMEM100の検討も並行して行っているが、本年度は以下の実験も実施した。今回の研究において、Tmem100の心臓形成における意義を明らかにするため、Tmem100 KOマウス胎仔の心臓形態について詳細に検討した。その結果、胎生9.5-11.5日に生ずる房室管内皮細胞の間葉細胞への分化(EndMT)が、Tmem100欠損によって著しい阻害を受けることが明らかになった(Mizuta et al., 2015)。房室管EndMTは心内膜床形成に必須の現象であり、その異常は心房・心室中隔欠損症や心臓弁膜症の直接の原因となる。Tmem100欠損によるEndMT異常は、胎仔の心臓房室管エクスプラント培養系でも再現され、細胞内カルシウムイオンによるシグナル伝達系がTmem100欠損により障害されていることが示唆された。これらの研究により、Tmem100が胎生期の心血管形態形成に重要な意義を有することは明らかとなったが、成長後の疾患や病的血管新生に関与しているかは不明のままである。そこで今回、誘導型Tmem100欠損マウスモデルを用いて、大腿動脈結紮による下肢虚血後の血管新生・血流回復におけるTmem100の意義を検討した。成長後にTmem100欠損を誘導したマウスにおいて下肢虚血後の血流回復には有意な変化は認められず、少なくとも今回採用したモデルでは、成長後の血管新生に対するTmem100の意義は明らかにならなかった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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