研究概要 |
本研究の目的は, 新規開発したヒト肺細胞分離法を用いて,疾患肺(とくにCOPD肺)より肺胞II型上皮細胞および内皮細胞を分離し,それらの機能・遺伝子発現・エピゲノム修飾と疾患の関係をin vitroで解析することである. 今年度は,COPDおよびnon-COPD肺より分離した肺血管内皮細胞を用いて,遺伝子発現とエピゲノム修飾を網羅的に解析した.解析した症例は,COPD 4例 (年齢 66.0 +/- 9.0歳, Pack-Years 35.3 +/- 12.4, FEV1% 63.0 +/- 4.7%),non-COPD 4例 (年齢 60.0 +/- 4.6歳, Pack-Years 33.3 +/- 20.2, FEV1% 84.1 +/- 8.3%)であった.遺伝子発現においては,TGFB2, SEFRP2, WNT5B, BMPR1B, TLE2, LATS2, USP34の発現変化が,COPD内皮細胞において大きく変化しており,これらの因子がCOPD病態に影響していると考えられた.COPDとnon-COPD間において,miRNA発現にも差異が認められ,エピゲノム修飾も病態発現に関与していると考えられた.これらの結果をもとに,COPDと内皮細胞機能に関する臨床研究を行い,論文発表を行った.また,肺線維症における肺上皮細胞のエピゲノム解析をおこない,こちらも報告した. 平成26年度は,上記遺伝子の内皮細胞機能への影響を解析し,COPD内皮細胞をターゲットとした創薬を目指した研究を進める.同時に,引き続き疾患肺由来の細胞分離を進め,肺胞上皮細胞においても上記の解析を進める.さらにCOPD内皮細胞で特異的に発現上昇していた因子の肺胞上皮細胞への影響を解析し,疾患肺胞における内皮ー上皮クロストークの解明を目指す.
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