研究課題/領域番号 |
25293191
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柳澤 聖 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20372112)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / プロテオミクス |
研究概要 |
我々が、悪性胸膜中皮腫組織試料を用いたプロテオミクス解析の結果から同定した新規診断マーカー候補分子に関して、候補分子を標的として作製された抗体群を応用したサンドイッチELISAシステム構築を進め、将来臨床応用可能な悪性胸膜中皮腫診断キットの作製を目指した。 平成25年度は、血液診断法として有用性の高いキットの作製を目指した結果、十分な感度と特異性を持つプロトタイプの開発に成功した。このプロトタイプを用いて、血液268試料(悪性胸膜中皮腫23例、非小細胞肺癌118例、慢性閉塞性肺疾患19例、間質性肺炎34例、対照健常者74例)を対象に、標的分子の血液中濃度を測定し、その結果に基づいた診断精度の評価を進めた結果、感度75%以上、特異度90%以上を達成し、既存の診断マーカーと比較して高精度な診断が可能であることが確認された。さらに、既知の悪性胸膜中皮腫マーカーであるMPFと組み合わせて診断を進めることにより、感度が20%程度向上することが明らかとなった。 以上の知見に基づいて、特許の出願を完了している(2014年3月)。 また、我々が同定した悪性胸膜中皮腫組織で高発現し、中皮腫細胞の増殖に重要な働きを持つ小胞体存在分子に関しては、平成25年度の成果として、小胞体で活性化を受けるキナーゼと結合し、その活性化を阻害することに機能の不活化を惹起し、悪性胸膜中皮腫細胞の増殖促進へ寄与するという、新たな知見を得ることに成功している。 現在、両研究に関する論文の作成を進めており、本研究課題の成果を広く社会還元出来るように努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標として、研究対象とする2種類の分子に関して、それぞれ、悪性胸膜中皮腫存在診断法開発、並びに中皮腫細胞増殖の分子機構の詳細解明への基盤を構築することを目指していた。 診断法開発に関しては、既存の診断法の性能を凌駕するプロトタイプの作成に成功しており、今後の改良により、更なる性能の向上が認められる検討結果が得られている。 中皮腫細胞の増殖に寄与する分子機構解明に関しては、当該過程に深く関与するキナーゼの同定に至っており、今後、本知見を基盤とする新たな治療法開発の発展が期待される成果を得たと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
診断法開発に関しては、実際の診療現場で用いる事を念頭に、診断精度を保ちつつ、解析方法の簡素化、解析時間の短縮化を目指していく。 中皮腫細胞の増殖に寄与する分子機構解明に関しては、本年度の知見より、分子間結合による細胞増殖能の制御が行われていることが明らかとなり、新たな分子標的治療法の開発を目指した化合物のスクリーニングシステム構築を目指していく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
中皮腫診断キットのプロトタイプ開発により、大規模に有用性の検証を速やかに進める必要が生じ、新たな診断マーカー候補分子の探索研究である、中皮腫細胞分泌エクソソーム中のタンパク発現解析研究の時期を次年度に変更したことによる。 中皮腫細胞分泌エクソソームに着目した、新たな分子診断候補分子の探索研究を開始するとともに、すでにプロトタイプ開発済の診断キットを用いた臨床研究への移行準備を並行して進める計画である。
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