研究課題/領域番号 |
25293191
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柳澤 聖 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20372112)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / 分子診断 / 分子標的治療 |
研究実績の概要 |
難治性腫瘍である悪性胸膜中皮腫は、発症例の持続的な増加にもかかわらず、分子診断・治療法の開発が立ち遅れている。我々は、最先端のプロテオミクス技術を駆使した探索的研究により、これまでに中皮腫組織で過剰発現する2つの極めて有望な診断・治療への応用が期待される分子の同定に成功している。本研究課題では、これらに関連分子群を加えて包括的な機能解析を進めることにより、そのシグナル伝達経路の解明を目指すとともに、分子診断法としての有用性の検証を進め、革新的診断・治療法の開発へと道を拓くことを目的とする。 前年度は、すでに開発済みのELISAを用いたプロコール変更による解析時間の短縮を実現したが、本年度は、より強く臨床への実用化を念頭においた新システムの開発を進めた。具体的には解析手順の簡略化と診断精度の向上を目指した1-step ELISAで用いる検出用標識抗体の新規開発である。複数の候補標識抗体を得ることができたため、これらの抗体を用いた検討を進め、診断精度の確認解析を行った。その結果、2-step ELISA診断システムと比較して、診断精度の若干の低下が認められるものの、最適と期待される検出抗体を得る事が出来た。次年度は、さらにプロコールの最適化を進める事により、診断精度の向上に努めていく計画である。また、アスベスト曝露非悪性胸膜中皮腫例を対照とした検討を進める事により、臨床有用性の検討をさらに深めていく計画である。 並行して進める悪性胸膜中皮腫に対する治療標的候補の機能解析に関しては、前年度までに、標的分子と共作用するキナーゼを同定していたが、さらに、その制御機構に関するフォスファターゼを同定することに成功している。これらの知見を最大限に活用して、治療薬候補となる低分子化合物のスクリーニング系の構築を現在進めており、次年度は、システムの確立と、その応用による化合物スクリーニングの開始を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実臨床への応用が期待される新規分子診断キットの作成並びに改変に成功するとともに、治療標的と期待される分子の機能に関して新たな知見を得ることが出来た。 これらにより、当初研究に対して付加的な研究項目が得られたため、それらの完遂に時間を要する事となったため。
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今後の研究の推進方策 |
悪性胸膜中皮腫に対する新たな診断法の確立に関しては、実用化を念頭に置いた臨床試験を展開することを計画する。 治療標的候補分子に関しては、新たに得た知見に基づき、治療薬開発のシーズとなる低分子化合物スクリーニング系の構築を計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
診断システム開発に関しては、診断標的分子の検出をより簡便に行う事が可能な新規標識抗体の取得と、それを応用した診断システムのプロトタイプ構築が実現した事から、その最適化と臨床性の試験の実施を進める必要があり、治療標的分子の機能解析に関して、新たな分子標的となる分子が発見されたことから、前年度までに得られていた知見に基づいたシグナル伝達系の阻害因子スクリーニング系に代わる新たなシステムを構築する必要があるため。 上述の如くに新規に追加した計画を平成28年度に行うため。
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次年度使用額の使用計画 |
診断標的分子に関する研究を進めるために、臨床への応用を念頭においた臨床性能試験の実施準備に使用予定である。さらに、当該分子の治療標的としての有用性を検証するために、分子・細胞生物学的機能解析に使用予定である。 治療標的分子に関する研究では、分子間結合を標的とする化合物のスクリーニング系の構築を進め、その有用性の細胞生物学的解析に使用予定である。
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