研究課題
腎臓髄質領域血流量(MBF)では総腎血流量の10%にも満たない供給下で、ヘンレのループ太い上行脚(mTAL)において酸素を消費しながらナトリウム再吸収を行っていることから、慢性的に低酸素状態となっており虚血に弱く障害を受けやすい構造となっている。MBFは圧-ナトリウム利尿機構を介したナトリウムバランス、ひいては血圧の維持に非常に重要な役割を果たしている。酸化ストレスは直血管の収縮を介してMBFを低下させるが、その産生は主にNADH oxidaseとミトコンドリアに由来するといわれる。本研究では、これまで寄与が充分に明らかにされてこなかったミトコンドリア由来酸化ストレスの腎障害への寄与について解明を試みた。Sprague Dawley(SD)ラットを対象とした急性実験において、虚血再灌流時にはMBFの低下が起こるが、ミトコンドリア特異的活性酸素(スーパーオキサイドアニオン)消去剤であるMitoTEMPOの投与はMBFの低下を回復させる作用が見出された。さらに、ミトコンドリア由来酸化ストレスが腎障害を改善する可能性について慢性実験での検討を行った。MitoTEMPOならびにミトコンドリア非特異的活性酸素消去剤TEMPOLを持続投与し、左腎臓に虚血再灌流(I/R)を行い腎障害を誘導した。1週間後にラットより腎臓を採取して腎組織障害について観察を行ったが、今回の条件下においてはMitoTEMPO群とTEMPOL群との間に顕著な組織障害の差を認めるには至らなかった。
2: おおむね順調に進展している
これまで急性実験において明らかにしてきたミトコンドリア由来酸化ストレスによる腎機能についての影響について、慢性実験での検討・評価を行った。
残念ながら、本年度の検討においてはミトコンドリア由来酸化ストレス低減による腎障害抑制作用を明らかにすることはできなかったが、今後、異なる条件下や異なるモデル動物を用いることにより、ミトコンドリア由来酸化ストレスの寄与をさらに明らかにしていく予定である。
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