筋萎縮性側索硬化症 (ALS)や脊髄小脳変性症 (SCA)などの神経難病は、治療法が確立しておらず、病態解明が急務である。SCA2型は、Ataxin-2のポリグルタミン鎖異常伸長が原因であるが、最近になって本リピートの中等度伸長が、ALSの危険因子であることが判明し、Ataxin-2の機能破綻が、両疾患に共通した神経変性機構の根底にあると考えられた。しかしながら、Ataxin-2の生理的機能は依然として不明であった。一方、我々は、Ataxin-2がmicroRNAの機能複合体であるRISCの構成因子であることを発見したことから、主にmicroRNAとの相互関係に着目しながら、その生理的機能を特定し、更にポリグルタミン鎖伸長が本機能にどのように影響するのかを明らかにするため、本研究を開始した。これまでに、Ataxin-2がmicroRNAの機能複合体RISCと結合すること、結合に必要不可欠なドメインを決定した。また、microRNAをRISCへloadする複合体には含まれず、TNRC6Aなどと共存していた。機能アッセイを行うと、TNRC6Aが翻訳抑制に働く一方で、Ataxin-2はタンパク質発現を促進する機能を持つことが判明した。レポーターアッセイでは、microRNAによる翻訳抑制自体に与える影響は軽微であった。一方、本年度は、主に脳脊髄におけるAtaxin-2の標的を明らかにするため、組織中のAtaxin-2に対するCLIP法の確立を目指した。4-SUをマウス腹腔に投与すると、高効率に脳に移行し神経細胞に取り込まれることが確認できた。次に、脳組織を摘出後バラバラにし、紫外線を照射して免疫沈降が可能な様々な条件を検討し、最終的に脳組織でのCLIP法が確立できた。今後、この手法を利用して脳に発現するAtaxin-2の標的RNAを決定する。
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