研究課題/領域番号 |
25293204
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 潤一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40183305)
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研究分担者 |
松下 拓也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (00533001)
山崎 亮 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10467946)
真崎 勝久 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90612903)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脱髄性疾患 / グリア細胞 / コネキシン |
研究概要 |
平成25年度に行ったこと 脱髄性疾患におけるconnexin(Cx)の脱落メカニズムを調べるために、脱髄性疾患患者の Cx蛋白群に対する自己免疫応答を解析した。ヒトCx43、Cx32遺伝子をトランスフェクトし、細胞膜上にCx43、Cx32蛋白を強制発現させたHEK293細胞に患者血清を作用させ、蛍光免疫染色法により評価した。30例の多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)患者、30例のNMO (neuromyelitis optica)患者、40例の他神経疾患、20例の健常者の血清でCx43、Cx32に対する自己抗体の有無を検索したが、自己抗体はいずれの群でも認められなかった。マウス新生児由来初代培養アストロサイトを用いて、炎症性サイトカイン反応時のCx43の発現変化を検討した。その結果、TNFαやIFNγ反応後にCx43のmRNA発現量や蛋白発現量が有意に低下することを見出した。今後は、IL-17やIL-9などのサイトカインではCx43がどのように発現変化するか検討予定である。 また、アストロサイト間、アストロサイト・オリゴデンドロサイト間のgap junction (GJ)を形成するCx43 や Cx32 をsiRNA でノックダウンしたり、抗Cx43抗体や抗Cx32抗体でブロックしたりすることで、培養アストロサイトにおけるCx43喪失の影響の解析やEAE(experimental autoimmune encephalomyelitis)におけるCx43 およびCx32 喪失の影響の解析を計画していたが、これを変更しより確実にCx43 やCx32 をノックダウンできる薬剤誘導型Cre依存的条件付きコネキシン欠損マウスを用いて研究することとした。これらのマウスでは、ある特定の時期に薬剤(タモキシフェン)投与によりアストロサイトに発現するCx、あるいはオリゴデンドロサイトに発現するCxをノックアウトすることができる。平成25年度には、Cx43f/fマウスおよびGFAPCreERマウスを入手しマウスコロニーの作成を開始した。さらに、相同組み換えによりCx32flox アリルを持つES 細胞を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように患者血清中の自己抗体の検索をすでに行い、初代培養アストロサイトの系での実験も進展している。Cx43 およびCx32 喪失の影響をみるための薬剤誘導型Cre依存的条件付きコネキシン欠損マウスの準備も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、Cx43f/fマウスおよびGFAPCreERマウスを交配させ、Cx43f/f;GFAPCreERマウスコロニーを作成する。Cx43f/f;GFAPCreERマウスよりアストロサイトを培養し、薬剤(タモキシフェン)投与によりアストロサイトの細胞間に形成されるCx43 によるhomotypic GJチャネルを破壊する。Cx43-GJ 存在培養アストロサイトと、Cx43-GJ 破壊アストロサイトでDNA マイクロアレイ解析により、発現が増減する蛋白を評価する。変動があった蛋白については、リアルタイムPCR で定量して確認する。Cx43f/f;GFAPCreERマウスを用い、再発寛解型・慢性進行型EAEの両者において、アストロサイト間のGJ を形成するCx43 をノックダウンしEAE への影響を臨床病理学的に評価する。 相同組み換えにより得られたCx32flox アリルを持つES 細胞より、キメラマウスを作成し、さらにCx32f/+ マウスを経てCx32f/f マウスのコロニーを作成する。同様に相同組み換えにより得られたCx47flox アリルを持つES 細胞より、キメラマウスを作成し、さらにCx47f/+ マウスを経てCx47f/f マウスのコロニーを作成する。Cx32f/f マウスとCx47f/f マウスはPLPCreERマウスと交配を行う。 市販されているCx43 mimetic peptide、Pannexin (Px) ヘミチャネルmimetic peptide を購入し、これらをEAE マウスに投与して、EAE の変化を臨床病理学的に観察する。Cx およびPx ヘミチャネルを阻害することで、EAE が軽減することが期待され、MS をはじめとする中枢神経系脱髄性疾患の新規治療薬の開発につなげる。また、Cx43 をアストロサイトに過剰発現させた際のEAE への影響を解析するためのテトラサイクリン誘導アストロサイト特異的Cx43 発現システムを構築する。さらにCx32 をオリゴデンドロサイトに過剰発現させた際のEAE への影響を解析するためのテトラサイクリン誘導オリゴデンドロサイト特異的Cx32 発現システムを構築する。
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