研究実績の概要 |
多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)、視神経脊髄炎(neuromyelitis optica: NMO)、Baló病の脱髄病巣におけるコネキシン(connexin: Cx)蛋白の神経病理学的解析が完了し、急性期の脱髄病巣では共通してアストロサイトのCx43脱落が広汎に認められることを見出した。これら一連の研究成果を英文総説として発表した(Masaki K. Neuropathology, 2015)。さらに、NMO患者の脊髄病変の分布、進展に関する神経病理学的・神経放射線学的研究を行った。その結果、灰白質病変のみならず、白質とくに側索や後索に病変が多く存在すること、早期病巣と考えられるisolated perivascular lesionsも白質にのみ多発していたことを見出し、国際神経病理学会雑誌Brain Pathology誌に報告した(Hayashida S, et al. Brain Pathol in press)。Isolated perivascular lesionでもCx43は発現が低下していた。次に、脱髄病巣におけるCx43脱落機序を解明するために、マウス大脳由来初代培養アストロサイトを用いてCx43発現を変化しうる因子を検討した。その結果、T細胞サブセットの中でもTh1細胞由来の液性因子がCx43発現を低下させることを見出した。サイトカインの中ではIFNγが容量依存的にCx43を低下させ、加えて高容量のIL-17でもCx43の発現を低下させることを発見した(Watanabe M, et al. in preparation)。一方、Cx43脱落と脱髄の関連をin vivoで評価するため、Tamoxifen によりinducible なアストロサイト特異的Cx43 conditional knockout(cKO)マウスを作製し、解析をすすめている。
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