研究課題/領域番号 |
25293206
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
宇川 義一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50168671)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経可塑性 / 長期増強 / 長期抑圧 / 反復磁気刺激 / 機能画像検査 / LTP / LTD / fMRI |
研究概要 |
脳の柔軟性を外部から誘導する我々が開発したQPSという刺激方法に関して、本年度は以下の3点の研究を施行した。 機能画像によるQPS刺激効果の解析(Human Brain Mapping 2013 Jul 29. doi: 10.1002/hbm.22300):機能的MRIを用いて、刺激前後の脳全体での各部位の連絡(デフォルトモードネットワーク)解析を行った。刺激により、長期増強(LTP)が誘導された部位では、対側の部位との関連が弱くなり、長期抑圧(LTD)が誘導された部位では、対側との関連が強くなった。 運動野QPSの対側運動野興奮性への影響(J Neurophysiol. 2014 Jan;111(1):26-35):一側運動野QPSの後に対側運動野刺激興奮性をMEPの大きさの変化により検討した。一側のQPSにより同側の興奮性が亢進した時に(LTP)、対側の運動野もLTP様の変化が起きていた。上述の二つの研究により、長期増強効果が誘導されている時は、両側の運動野が興奮性を増して反応が出現しやすくなっていて、それらは独立して機能している可能性が示唆された。この事実は、特定の部位の刺激による長期効果の臨床応用に際して、その効果を判断する時の重要な情報となった。 QPSのプリズム順応に対する影響(未発表データ):QPSを小脳部位に当てる事により、小脳に変化を誘導できるかを解析した。キナームなどを用いた一般的な小脳検査では、有意な効果を誘導出来なかったが、プリズム順応による運動学習効率には、ある程度の効果が誘導出来る可能性が示された。今後、小脳疾患などへの臨床応用を考える際に大いに役立つ結果を得る事が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定になかった、QPS後の機能画像の検討が出来たことは、研究の重要な伸展であり、今後の磁気刺激臨床応用に大いに役立つ情報を提供した。その意義は大きく、達成度としては満足出来るものである。さらに、刺激対側脳への長期影響も解析され、脳全体への効果を判断する時の有用な情報を提供する結果出であった。この事も、当初の予定にない成果であり、大いに評価出来る。QPSの小脳への影響を見るという研究は、当初から予定されていた項目であり、この一部が達成できたため、おおむね順調に研究が進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ほぼ予定の研究成果が実現できたため、今後も予定通りに研究を進める事を考えている。さらに、シナプス可塑性以外に、神経軸索の可塑性もヒト脳の柔軟性を維持する機序として注目を浴びている。予定に加えて、軸索の可塑性の研究も加える事を考慮している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、使用予定の刺激装置の購入ができ実験を開始した。そして実際の実験方法の開発を研究者同士など少人数で施行している。ただし、実験方法が確立して多くの被験者でデータを取得する段階にまだなっておらず、人件費・謝金などを使用する状況にならなかったため、使用しない項目が生じた。 来年度以降に、被験者謝金、部屋の使用量などの実際に多くの被験者で施行するための予算に使用する予定である。
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