研究課題
基盤研究(B)
我々はALS/FTLD、ポリグルタミン病の神経細胞変性におけるUBQLN2の役割を解明することを目的として研究を開始している。平成25年度はUBQLN2の機能解析を開始するに当たり、ALSの原因として複数家系で確認されている変異を選び、変異型UBQLN2発現ベクターの作製を行った。一過性の過剰発現系において変異型UBQLN2と野生型UBQLN2を発現させ、プロテアソーム阻害薬、オートファジー阻害薬、ERストレス誘導役など様々なストレスに対する反応を検討したが、現在のところ変異型UBQLN2と野生型UBQLN2の挙動に変化は見られていない。今後ユビキチンプロテアソーム系、オートファジー系の構成因子との結合の差の検討や細胞に与えるストレスの種類を変えて変異型UBQLN2と野生型UBQLN2挙動の差を解明していくと同時にノックダウンの影響を予定通り追加検討していくこととしている。本研究では、ALSにおける我々のUBQLN2のloss of function仮説をin vivoで証明するために、Ubqln2の運動ニューロン特異的ノックアウトマウスを作成し、機能解析、治療介入を行うことが最も重要な課題となっている。そのためにloxP配列でUbqln2遺伝子を挟み込むloxP-Ubqln2マウスと、運動ニューロン特異的なCre発現をおこすVAchT-Creマウスの交配により、運動ニューロン特異的なUbqln2ノックアウトマウスを作製することを目的に研究に着手している。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は主に培養細胞系を用いて ①UBQLN2のユビキチン-プロテアソーム系、またオートファジー系における役割の解明、また②野生型、変異型UBQLN2の過剰発現、野生型UBQLN2のノックダウンによってもともと凝集性の高いRNA結合タンパク(TDP-43, FUS/TLS)の凝集が見られるか、そして神経毒性が発揮されるかどうかを検証する予定であった。培養細胞系の実験系の構築に関しては順調に進んだが、まだ野生型UBQLN2と変異型UBQLN2の機能の差を示す確証が得られていないので、不十分な面もある。一方UBQLN2の運動ニューロン特異的コンディショナルノックアウトマウスを作成に関しては、平成25年度はUbqln2のターゲティングベクター構築を行い、ES細胞への導入を行った。ターゲッティングベクターが組み込まれたES細胞クローンが順調に得られており、現在はキメラマウスを作製している段階である。マウス作成実験に関しては順調に進んでいるため、研究全体としては概ね予定通りに進行していると考えられる。
培養細胞系を用いた UBQLN2とユビキチン-プロテアソーム系、またオートファジー系における役割の解明については、通常用いられるプロテアソーム阻害剤、オートファジー阻害剤負荷などでは、野生型と変異型の挙動の差が見られない。今後はRNA結合タンパク質やポリグルタミンタンパク質など凝集性の高いタンパク質を付加した際に、そのタンパク質処理や神経毒性に対して、野生型と変異型UBQLN2の過剰発現または野生型UBQLN2のノックダウンが与える影響が変化するかを検討する予定である。また、野生型、変異型UBQLN2とユビキチンプロテアソーム系、オートファジー系の構成因子との結合の差も解析していく予定である。野生型と変異型の過剰発現、または野生型のノックダウンの細胞に対する影響が細胞死や凝集タンパク質増加といった通常の解析でとらえられる変化として検出できなかった場合は、質量解析装置を用いた凝集物質プロテオミクス解析を行うことによって変化を検出したいと考えている。また平成26年度は質量解析装置を活用してリン酸化を含むUBQLN2翻訳後修飾の同定、翻訳後修飾によるUBQLN2の機能調節機構の解明に着手し、また新規UBQLN2結合タンパク質同定も行っていく予定である。Ubqln2の運動ニューロン特異的ノックアウトマウスの作成に関しては順調に進んでおり、引き続き作成を継続していく。
培養細胞系実験に要する費用が、当初の予定に比べて少額で済んだため。平成26年度は培養細胞系実験において要する費用が平成25年度に比べて増大するため、それらの消耗品費として使用する予定である。
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