異なる3種類の抗体(Santa-Cruz:C-19、Santa-Cruz:H-90、abcam:70005)を用いて、膵臓におけるATF3の発現パターンを調べた。野生型マウスの膵臓切片において、これらのATF3抗体とインスリン、あるいはグルカゴン抗体との2重免疫染色を施行した所、C-19抗体ではATF3はグルカゴンと共染色したが、インスリンとは共染色しなかった。一方、H-90抗体とabcam抗体ではATF3はインスリンとグルカゴンの両方と共染色した。また、C-19抗体ではATF3は細胞質優位に染色されており、H-90とabcam抗体では核に優位に発現が確認された。これらの結果から、ATF3は染色に用いる抗体によって膵臓における発現パターンが異なって解釈される可能性が示唆された。一方、これらの抗体を用いて、高脂肪食飼育マウスとdb/dbマウスのラ氏島細胞におけるATF3とFoxO1の発現レベルを、組織免疫染色を用いて検討したが、コントロールマウスと比べて有意な差は認められなかった。また、これらのマウスからラ氏島を単離し、定量RT-PCRを用いてATF3とFoxO1のmRNA量を解析したが、やはり有意な差は認められなかった。α細胞におけるATF3の生理的役割をin vivoで明らかにする為に、Glucagon-CreマウスとATF3 floxマウス、あるいはFoxO1 floxマウスを交配し、α細胞特異的ATF3ノックアウトマウスとα細胞特異的FoxO1ノックアウトマウスを作製した。これらのマウスの血糖値(空腹時血糖と随時血糖共に)は正常範囲であった。現在、これらのマウスを用いて糖脂質代謝を詳細に解析中である。
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