研究課題/領域番号 |
25293211
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
細田 公則 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (40271598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | seipin / iPS細胞 / 脂肪細胞 / 脂肪萎縮症 / インスリン抵抗性 |
研究実績の概要 |
先天性全身性脂肪萎縮症は、全身脂肪組織の欠如に伴い、著明なインスリン抵抗性糖尿病、高中性脂肪血症、脂肪肝等を呈する常染色体劣性遺伝疾患である。BSCL2遺伝子は先天性脂肪萎縮症の原因遺伝子の一つであり、SEIPINをコードしている。マウス細胞やノックアウトマウスを用いてSEIPINの機能解析が行われてきたが、Bscl2ノックアウトマウスは脂肪萎縮の程度や糖尿病が軽度であるなど表現型に種差があり、ヒト試料を用いた解析モデルが欠知していることが問題であり、SEIPINの機能は不明であった。今回、我々はBSCL2遺伝子に変異を有する日本人患者2名(EI89X変異およびR275X変異)からiPS細胞(BSCL2-iPS細胞)を樹立し機能解析した。 BSCL2-iPS細胞を胚様体形成法で分化させたところ、健常者由来iPS細胞に比べ、BSCL2-iPS細胞では脂肪蓄積の著明な低下とPPARγ2遺伝子発現低下を認めた。 BSCL2-iPS細胞はヒトにおける脂肪萎縮症の病態を再現し、疾患メカニズムを解析でき るモデルとして重要なツールとなりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最初の症例のseipin遺伝子異常による先天性脂肪萎縮症の症例由来のiPS細胞では、脂肪細胞分化誘導を行わなくても、seipin遺伝子異常による先天性脂肪萎縮症の症例由来iPS細胞は自然に分化する傾向が強く、最終的には、seipin遺伝子異常による先天性脂肪萎縮症由来iPS細胞の培養において、分化傾向のある細胞を除去しながら、培養を行う事に可能になっていた。 次の脂肪萎縮症症例のiPS細胞実験においては、当初の予想に反して当該iPS細胞の未分化能の維持が困難であることが明らかとなった。この問題を解決するため、複数クローンで、より未分化能を保つiPS細胞培養について、培養密度を含めて至適な継代培養の条件を検討し、未分化能維持の可能な条件を明らかにした。 以上のように疾患特異的iPS細胞の培養方法の確立に時間を要した為に、進捗状況は、やや遅れていた。
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今後の研究の推進方策 |
先天性全身性脂肪萎縮症のBSCL2遺伝子に変異を有する日本人患者2名(EI89X変異およびR275X変異)から確立したiPS細胞(BSCL2-iPS細胞)を胚様体形成法で分化させ、免疫染色による検討では、健常者由来のiPS 細胞とBSCL2-iPS細胞において、ADRP(adipose differentiation-related protein)の局在を比較検討する。BSCL2-iPS細胞ヘ野生型BSCL2遺伝子を強制発現させるレスキュー実験を行い、脂肪蓄積能やADRPの局在の回復を検討する事により、BSCL2-iPS細胞がヒトにおける脂肪萎縮症の病態を再現し、疾患メカニズムを解析できるモデルとして重要なツールとなりうるかどうかを、検討する。以上について、論文のreviseの段階にあり、最終的なacceptを目指して、実験を仕上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
健常者由来のiPS 細胞とBSCL2-iPS細胞において、胚様体形成による脂肪細胞分化誘導の系で、健常者由来のiPS 細胞とBSCL2-iPS細胞で差のある事、及び、その病因機序として、ADRP(adipose differentiation-related protein)に着目して、その分布の差がある事を示す為。 BSCL2-iPS細胞ヘ野生型BSCL2遺伝子を強制発現させるレスキュー実験を行い、脂肪蓄積能やADRPの局在の回復を示し、BSCL2-iPS細胞がヒトにおける脂肪萎縮症の病態を再現し、疾患メカニズムを解析できるモデルとして重要なツールとなりうるを示す為。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫染色を用いて、健常者由来のiPS 細胞とBSCL2-iPS細胞において、胚様体形成による脂肪細胞分化誘導の系で、ADRP(adipose differentiation-related protein)の局在の比較検討を行う。 BSCL2-iPS細胞ヘ野生型BSCL2遺伝子を強制発現させるレスキュー実験を行い、脂肪蓄積能やADRPの局在の回復を検討する。
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