研究課題
先天性全身性脂肪萎縮症は、全身脂肪組織の欠如に伴い、著明なインスリン抵抗性糖尿病、高中性脂肪血症、脂肪肝等を呈する常染色体劣性遺伝疾患である。BSCL2遺伝子は先天性脂肪萎縮症の原因遺伝子の一つであり、SEIPINをコードしている。マウス細胞やノックアウトマウスを用いてSEIPINの機能解析が行われてきたが、Bscl2ノックアウトマウスは脂肪萎縮の程度や糖尿病が軽度であるなど表現型に種差があり、ヒト試料を用いた解析モデルが欠知していることが問題であり、SEIPINの機能は不明であった。今回、我々はBSCL2遺伝子に変異を有する日本人患者2名(EI89X変異およびR275X変異)からiPS細胞(BSCL2-iPS細胞)を樹立し機能解析した。BSCL2-iPS細胞を胚様体形成法で分化させたところ、健常者由来iPS細胞に比べ、BSCL2-iPS細胞では脂肪蓄積の著明な低下とPPARγ2遺伝子発現低下を認めた。免疫染色による検討では、健常者由来のiPS 細胞においてADRP(adipose differentiation-related protein)は細胞質内に小粒状に存在していたが、 BSCL2-iPS細胞ではADRPは細胞質全体に一様に散在していた。BSCL2-iPS細胞ヘ野生型BSCL2遺伝子を強制発現させたところ、脂肪蓄積能やADRPの細胞質内の小粒状の局在が回復した。また、共免疫沈降により野生型SEIPINはADRPと直接相互作用を有するが、変異SEPINはADRPと相互作用をしないことが明らかとなった。以上の結果からSEIPINはADRPと結合し、ADRPの細胞内局在を変化させることにより脂肪滴合成に関与している可能性が示唆された。BSCL2-iPS細胞はヒトにおける脂肪萎縮症の病態を再現し、疾患メカニズムを解析できるモデルとして重要なツールとなりうることが示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Metabolism
巻: 65(4) ページ: 543-556
10.1016/j.metabol.2015.12.015