研究課題/領域番号 |
25293213
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
石橋 俊 自治医科大学, 医学部, 教授 (90212919)
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研究分担者 |
永島 秀一 自治医科大学, 医学部, 助教 (30406136)
高橋 学 自治医科大学, 医学部, 助教 (70406122)
坂井 謙斗 自治医科大学, 医学部, ポストドクター (30646352)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コレステロール / オキシステロール / 酵素 / 加水分解 / 脂肪酸 / 小胞体 / 小胞体ストレス / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
1)CAG-floxedLacZ-Nceh1およびCAG-floxedLacZ-Lipeのトランスジェニックマウス(Tg)の作成:初年度作成したfounderからgermline transmissionしたTgにリゾチームのプロモーターでCreを発現するLys-CreTgを交配し、腹腔マクロファージ(MPM)のNceh1とLipeの発現を確認した。Nceh1もLipeもそれぞれ3ラインで過剰発現が確認できなかった。Tg由来培養肝細胞に組換えアデノウイルスを用いたCreの過剰発現によってもレポーター遺伝子の発現誘導は確認できなかった。そこで、プラスミドを直接293細胞にトランスフェクトし、Creを過剰発現させたところ、レポーター遺伝子の過剰発現が得られた。従って、Tg作成に用いたプラスミドDNAが損傷を受けた可能性が考えられた。そこで、DNA調整からやり直して、Tgマウスを作成中である。Nceh1は70匹出生中3匹、Lipeは32匹出生中2匹にgermline transmissionを確認している。 2)Nceh1ノックアウトマウス(KO)を用いた解析:Nceh1KO由来MPMに25ヒドロキシコレステロール(25HC)を添加すると、小胞体ストレスマーカーの発現が亢進した。この時、MPMの小胞体には25HCのエステル体が増加した。従って、Nceh1はコレステロールエステル(CE)だけでなく、25HCエステルも水解し、Nceh1が欠損すると水解されない25HCエステルが小胞体に蓄積し、小胞体ストレスが誘導されると考えた。 3)Nceh1KOとLipeKOの諸臓器のオキシステロール類をLC-MS/MSを用いて定量した。副腎では、LipeKOで7αHC、25HC、27HCのエステル体の有意な増加、心臓では、Nceh1KOでだけ7αHCと27HCのエステル体、腎臓では、Nceh1KOでだけ7αHCのエステル体、褐色脂肪組織では、LipeKOでだけ27HCのエステル体の有意な増加が確認された。一方、その他の臓器ではオキシステロールエステル体の蓄積はどちらのKOでも確認できなかった。従って、各オキシステロールエステル体は組織毎に固有の酵素で水解を受ける可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度作成したfounderからgermline transmissionしたTgにリゾチームのプロモーターでCreリコンビナーゼを発現するLys-CreTgを交配して、腹腔マクロファージ(MPM)のNceh1とLipeの発現を確認したところ、過剰発現が確認できなかった。初代培養肝細胞にCMVプロモーターでCreリコンビナーゼを発現するアデノウイルスを感染させても、同様にレポーター遺伝子の過剰発現は確認できなかった。そこで、Tg作成に用いたプラスミドが想定通りに機能しない可能性を除外するため、プラスミドを293細胞にトランスフェクトし、Creリコンビナーゼを発現するアデノウイルスを感染させたところ、レポーター遺伝子の過剰発現が得られた。従って、Tg作成に用いたプラスミドがDNA損傷を受けて、想定通り機能しなくなった可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
改めて、DNA調整からやり直して、Tgマウスを作成中である。当初の予定通り、これらとLys-Creを交配して、当初計画した実験を遂行する。a) CE蓄積能、b)泡沫細胞の形態、c) コレステロール(FC) efflux、d)オキシステロール代謝、e )マクロファージ機能の評価、f)小胞体ストレス応答とアポトーシス誘導、g)M1/M2極性の評価、h)mRNA遺伝子発現 更に、マクロファージ特異的Nceh1過剰発現が動脈硬化の進展を抑制するか否かを検証するために、予定した以下の骨髄移植実験を推進する。LysM-Cre+;CAG-floxedLacZ-Nceh1+、対照LysM-Cre―;CAG-floxedLacZ-Nceh1+またはLysM-Cre+;CAG-floxedLacZ-Lipe+、対照LysM-Cre―;CAG-floxedLacZ-Lipe+をドナー、LDLRノックアウトマウスをレシピエントにした骨髄移植を行う。8週齢のレシピエントにγ線9Gy照射後、12週齢から1.25%コレステロール、15%ラードを含有する高コレステロール高脂肪食で飼育を開始し、3ヶ月後にあたる24週齢でA-3)に記載した項目を評価する。 「研究実績の概要」欄に記載したうように、Nceh1KOの臓器中のオキステロールエステルの増加が確認された。これは当初予想しなかった結果であり、Nceh1とLipeが臓器特異的・オキシステロール特異的にオキシステロールエステルの水解を担っていることが明らかになった。今後は、そのことの生理的意義も追求していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスジェニックマウス作成が当初の予定に比して遅れたため。具体的には、以下の理由による:初年度作成したfounderからgermline transmissionしたTgにリゾチームのプロモーターでCreリコンビナーゼを発現するLys-CreTgを交配して、腹腔マクロファージ(MPM)のNceh1とLipeの発現を確認したところ、過剰発現が確認できなかった。Tg由来初代培養肝細胞にCMVプロモーターでCreリコンビナーゼを発現するアデノウイルスを感染させても、同様にレポーター遺伝子の過剰発現は確認できなかった。そこで、Tg作成に用いたプラスミドが想定通りに機能しない可能性を除外するため、プラスミドを293細胞にトランスフェクトし、Creリコンビナーゼを発現するアデノウイルスを感染させたところ、レポーター遺伝子の過剰発現が得られた。従って、Tg作成に用いたプラスミドDNAが損傷を受けて、想定通り機能しなくなった可能性が考えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の当たる今年度に、2年度目に予定した実験を遂行する必要が生じた。具体的には、トランスジェニックマウスの樹立確認作業・マクロファージの代謝実験・骨随移植実験を単年度に行う必要がある。また、Nceh1とLipeノックアウトマウスの諸臓器にオキシステロールエステルの蓄積を見いだしたため、諸臓器の機能への影響を評価する必要が生じた。次年度使用額は以上の実験のための物品費に充当したい。
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