研究課題
研究代表者らは、ロコモーティブ症候群とメタボリック症候群の原因となる機能異常を解明することを本研究の目的とし研究を開始した。本年度においては、メタボリック症候群を構成する肥満に関連する遺伝子探索をゲノムワイドで行った。その結果、SLC25A24遺伝子のイントロンに存在する遺伝子多型がヒト体脂肪率と関連することを見出した。また、ヒト脂肪細胞では、この遺伝子多型によってSLC25A24のmRNAレベルでの発現が変化すること、さらにSLC25A24ノックアウトマウスを作成したところ肥満抵抗性の表現型を呈することを見出し、本遺伝子が体脂肪量を規定する重要な因子であることを見出した(Urano et al. J. Clin. Endocrinol. Metab., in press)。また、高齢者の骨折と関連する疾患として近年注目されている筋量の低下を特徴とするサルコペニアに関する遺伝子素因を見出すため、筋量を規定する遺伝子の探索を行った。その結果、間葉系細胞の分化において筋細胞と褐色脂肪細胞の分化を制御する転写因子であるPRDM16遺伝子の5’領域に存在する遺伝子多型が筋量と関連することを見出した(Urano et al. Aging Cell, 2014)。さらに研究代表者らはγグルタミルカルボキシラーゼ(Ggcx)遺伝子の骨芽細胞特異的ノックアウトマウスの作成に成功した。Ggcxは酵素として機能するが、ビタミンKがその作用を助ける役割を有して、タンパク質の修飾にかかわるメカニズムが示されている。今回、骨芽細胞特異的なGgcxノックアウトマウスの骨での表現系を解析した結果、骨形成が増強され、異常な石灰化を呈することを見出し、GgcxならびにビタミンKの骨における重要性を見出した(Azuma, Urano et al. J. Bone Miner. Res., in press)。
2: おおむね順調に進展している
研究代表者らはメタボリック症候群に関連する遺伝子としてSLC25A24遺伝子を見出し、本遺伝子のノックアウトマウスが肥満抵抗性を呈することを報告した。さらに研究代表者らは高齢者の骨折に関与する筋力低下の疾患として知られるサルコペニアに関連する遺伝子としてPRDM16遺伝子を見出した。さらにロコモーティブ症候群を予防する上で重要となるビタミンK作用において中心的な役割をはたす酵素であるGgcxに注目し、骨芽細胞特異的なGgcxノックアウトマウスの作成に成功し、骨における表現型を報告した。以上より、平成26年度においてはメタボリック症候群ならびにロコモーティブ症候群に関連する動物モデルも作成し、本疾患における重要な遺伝子を見出しており研究は順調に進展している。
今後も、ロコモーティブ症候群とメタボリック症候群の原因となる因子を老年医学、ゲノム医学、分子細胞生物学、内分泌学、生化学の手法を活用して多面的な観点から研究を進めていく。さらには今までの研究成果を発展させ、骨粗鬆症治療薬の反応性を規定する因子に関しても明らかにしていく。
平成27年度の消耗品費とするため。
消耗品費(試薬)として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件)
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