研究実績の概要 |
ロコモーティブ症候群とメタボリック症候群発症に関わる新規分子機構の解明を目指した。 ロコモーティブ症候群の一つである筋肉減少(サルコペニア)の原因遺伝子をゲノムワイド解析で探索し、筋肉と褐色脂肪細胞分化のスイッチング因子であるPRDM16遺伝子の5’上流域に存在するSNPを同定した。PRDM16遺伝子に存在するSNPは遺伝子変化により転写因子との結合が変化することも明らかにしており、今後、PRDM16遺伝子の転写活性を制御する液性因子・内分泌因子を見出すことがサルコペニアの病態解明ならびに新規治療薬の開発につながる可能性が見出された。 また、メタボリック症候群の一つである肥満の原因遺伝子としてゲノムワイド解析によりSLC25A24遺伝子を同定し、ノックアウトマウスを独自に作成した結果、SLC25A24ノックアウトマウスは、肥満抵抗性の表現型を示した。またSLC25A24ノックアウトマウス由来脂肪組織やSLC25A24遺伝子をノックダウンした脂肪細胞では脂肪細胞分化マーカーの発現が抑制され、脂肪蓄積も抑制されることを見出した(J Clin Endocrinol Metab 100, E655-663, 2015)。今後、SLC25A24遺伝子の発現制御機構を見出すことがメタボリック症候群の発症メカニズムを解明する上で重要となる。 さらに、骨粗鬆症治療においては性ホルモン補充療法に代わって、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)が多く用いられるが、SERM治療は骨量減少のみならず、高齢者の体重減少も抑制することを見出した(J Bone Miner Metab. In press)。高齢者の体重減少はサルコペニアにより発生することが示唆されており、SERM治療が筋肉量にあたえる影響を検証する必要がある。さらにSERM治療は前立腺癌の再発予防効果を示すことも見出した(BMC Cancer. 15, 836. 2015)。以上より本研究においてSERMのエストロゲン受容体を介した内分泌作用が高齢者関連疾患において多面的な効果を有することを示した。
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