研究課題
基盤研究(B)
骨格系の制御システムの分子機構の解明を通じ、その異常に基づく代謝性骨疾患、エネルギー代謝異常症、骨髄増殖性疾患などの病態および発症機構の解明を進め、骨格系と骨髄造血系の相互連関に基づく難治性病態に対する新しい治療法の開発へと繋げることを目的として以下の成績を得た。1. Interleukin (IL)-11/Wntシグナル系による骨芽・脂肪細胞分化の制御機構を解明するため、IL-11欠損(IL-11KO)マウスを作成した。IL-11KOマウスでは離乳後ほぼ全ての荷重骨で皮質骨・海綿骨共に野生型(WT)より骨密度(BMD)が低下していた。これはIL-11KOマウス骨におけるsclerostin, DKK-1,2などWntシグナル抑制因子の発現増加による骨形成低下に基づくことが明らかとなった。IL-11KOマウスでは骨髄脂肪細胞は逆に増加していたのみならず皮下および内臓脂肪量も増加し、インスリン抵抗性を示した。これらの成績からIL-11の骨芽細胞分化および骨形成における重要性が明らかとなったのみならず、脂肪細胞分化の抑制によりエネルギー代謝にも影響を及ぼすことが示された。2. 多発性骨髄腫と骨芽・破骨細胞との相互連関の解明と治療法の開発を目指した研究を進め、骨髄腫細胞により骨芽細胞でセリン・スレオニンキナーゼPim-2発現が誘導されPim-2は骨芽細胞分化を抑制すること、Pim-2作用の阻害により骨芽細胞分化が促進されることを明らかにし、骨髄腫細胞による骨形成抑制にPim-2発現の促進が関与する可能性を明らかにした。さらにPim-2阻害薬が骨髄腫細胞自身の生育・増殖を抑制するのに加え、骨髄腫による骨芽細胞分化および骨形成の抑制に拮抗し骨病変の進展をも抑制することを通じ、強力な抗骨髄腫効果を発揮することをin vivoで示し、新たな治療法開発への展望を開いた。
2: おおむね順調に進展している
(1)IL-11/Wntシグナル系による骨芽細胞分化制御機構の解明:IL-11欠損により力学的負荷への骨芽細胞分化促進による骨形成促進、骨量増加などの反応性が低下すること、これがDkk-1,2やsclerostinなどWntシグナル系抑制因子の発現亢進によることを明らかにすることが出来た。またIL-11遺伝子の組織特異的欠損マウス作成に必須のIL-11 floxマウスの作成を完了した。(2)多発性骨髄腫と骨細胞との相互連関の解明:骨髄腫細胞により骨芽細胞でPim-2発現が誘導されPim-2は骨芽細胞分化を抑制すること、Pim-2作用の阻害により骨芽細胞分化が促進されることを明らかにし、骨髄腫細胞による骨形成抑制にPim-2発現の促進が関与する可能性を明らかにした。Pim-2阻害薬が骨髄腫による骨芽細胞分化および骨形成の抑制に拮抗し、骨病変の進展を強力に抑制することをin vivoで示した。
1)IL-11/Wntシグナル系による骨芽・脂肪細胞分化の制御機構の解明:IL-11の全身的欠損マウスにおける骨、脂肪および筋肉組織における作用をWntシグナルへの影響を含め明らかにする。IL-11 floxマウスをosterix-Cre, osteocalcin-Cre, pparg-Cre, aP2-Cre、MCK-Creマウスなど分化段階依存性に組織特異的にCreを発現するマウスと掛け合わせ、骨芽細胞、脂肪細胞や筋肉細胞などにおけるIL-11の役割を解明する。(2)多発性骨髄腫と骨芽細胞・破骨細胞との相互作用の解明および治療法の開発:骨芽細胞におけるPim-2発現が破骨細胞系細胞から分泌されるTNF系サイトカインにより促進されるか否かを明らかにし、骨髄腫細胞を取り巻く骨髄微小環境が骨髄腫細胞の生育・増殖および骨形成に及ぼす影響の統合的理解を進める。さらに、Pim-2作用に対する特異的阻害薬の開発を進め、骨髄腫およびその骨病変の進展を特異的に阻害しうる治療法の開発をはかる
共同研究としてIL-11 floxマウスを作成頂いていた理化学研究所発生・再生科学総合研究所でのマウスの作成が2013年末となり、本学の動物実験施設への編入手続きに長時間を要したため、作成経費の2013年度内決済が不可能となった。次年度使用額はほぼその全額を上記のIL-11 floxマウスの作成経費支払いに充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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