研究課題
基盤研究(B)
本研究では次世代治療の基礎研究を進めるため、①ドライバー変異を標的とした治療法の改良・深化(次世代 FLT3 阻害剤)、②腫瘍で共通して認められる活性化分子治療法の開発(STAT3/5 阻害剤)、③抗体医薬との相乗効果を狙った小分子化合物のスクリーニングとその分子機序の研究(抗体薬との併用薬スクリーニング)、について臨床の立場から創薬に向けたトランスレーショナルリサーチを進める。①FLT3遺伝子変異を有するヒト急性骨髄性白血病細胞のNOGマウスへの異種移植系を4種類の白血病タイプについて樹立し、新規FLT3阻害剤の抗腫瘍効果を検討した。ヒト白血病細胞に対しても、従来のFLT3阻害剤と同等以上の抗腫瘍活性を示し、ゲートキーパー変異を含む耐性変異を有するFLT3分子に対しても阻害活性を示す化合部を見出し、臨床開発候補を決定した。②開発中の治験薬OPB-31121に関して、本剤がJAK2のリン酸化を阻害する事無くSTAT3のリン酸化を阻害している事、BCR-ABL、FLT3変異、JAK2変異を持つ白血病細胞株が本剤に対し高率に感受性である事を発見した。これらの癌遺伝子は本剤の感受性マーカーになると考えられる。更に、ヒト白血病細胞移植免疫不全マウスに対し本薬剤が著明な腫瘍退縮効果(T/C: 4〜58%)を示す事を確認した。③これまでの研究成果よりCHOP類似療法存在下において抗CD20抗体医薬によるマクロファージの貪食能が低下し、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブによって抗CD20抗体医薬によるマクロファージの貪食能が増強することを見出した。さらに細胞表面のCD20発現の変化およびリツキシマブ結合後のCD20の内在化について検討したが、レナリドマイドにおけるリツキシマブとの明確な併用効果、CD20の発現変化、CD20の内在化の変化について認めていない。
2: おおむね順調に進展している
新規FLT3阻害剤の開発は計画通りに進捗しており、NOGマウスでの異種移植系を確立を通して、臨床開発候補FLT3阻害剤の絞り込みが行われた。STAT阻害剤OPB-31121の作用機序を検討し、ヒト白血病細胞移植免疫不全マウスを用いて本薬剤の効果を確認できた。レナリドマイドと抗CD20抗体医薬との併用効果について検討し、現在B細胞リンパ腫に対して効果が期待される小分子化合物ibrutinibおよびidelalisibについて併用効果の検討、小分子化合物存在下における抗CD20抗体結合後の抗原の内在化、抗原の発現変化に対する検討にも着手しており、本研究は概ね順調に遂行している。しかし、抗体医薬と併用効果を持つ小分子化合物のスクリーニングや抗体依存性細胞傷害活性についての評価については、尚一層の努力を必要とする。
①新規FLT3阻害剤の臨床開発を推進するために、in vivoでのPOCの集積、ならびに耐性獲得の可能性、有効性を予測するバイオマーカーの検討を進める。②ヒト白血病細胞移植免疫不全マウスから取り出した細胞は細胞株よりもプライマリ腫瘍細胞の形質を強く保持した細胞であり、この細胞を用いる事で従来にない薬剤スクリーニングが可能となる(特許申請中)。このシステムを用いて既存の薬剤(抗癌剤に限らない)ライブラリをスクリーニングする事で抗腫瘍活性をもつ薬剤を発見していく。③抗CD20抗体医薬と種々の小分子化合物との併用効果のスクリーニングに着手する。スクリーニング系自体は当研究室で確立しており、その手法を応用して研究を遂行する。小分子化合物併用下における抗CD20抗体結合後の抗原の内在化、抗原の発現変化については、現在着手しているibrutinib及びidelalisibのみならず、上記のスクリーニング系によって抽出された薬剤などにつき、広く検討を行っていく。ボルテゾミブによるマクロファージの貪食能が増強される詳細な分子機序についても検討に着手していく。これらの検討により有望な薬剤が探索された際には、詳細な分子機序および治療効果についてin vitro、in vivoの両面より検討を進めていく予定としている。
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