研究課題/領域番号 |
25293219
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松岡 雅雄 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (10244138)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | HTLV-1 / HBZ / HTLV-1関連疾患 / 炎症 / Tax |
研究概要 |
1.HTLV-1 bZIP factor(HBZ)による炎症惹起機構におけるインターフェロンガンマ(IFN-gamma)の役割の解明:HBZトランスジェニックマウスとIFN-gammaノックアウトマウスの交配により炎症が大きく減弱することを見出した。その原因としてIFN-gammaノックアウトにより皮膚・腸管・肺へのリンパ球浸潤が抑制されていることを見出した。これはインターフェロンガンマがケモカイン受容体の発現亢進から遊走を促進していることが原因であると考えられ、現在、そのメカニズムを解析中である。 2.HBZによるexFoxp3 Tリンパ球増加作用:HBZはFoxp3遺伝子の転写を亢進させるが、その発現が不安定なため、exFoxp3細胞へと変換し、炎症を惹起する。HBZトランスジェニックマウスの制御性Tリンパ球Foxp3遺伝子のCNS1,2領域のメチル化を解析したところCNS2領域がメチル化しており、natural Tregよりもinduced Tregの性質を有していることが明らかとなった。また、HBZトランスジェニックマウスでは、Foxp3陽性細胞の多くがinduced Tregであることが判明した。 3.HBZによるFoxp3機能抑制機序:HBZとFoxp3を発現させることにより、HBZがFoxp3標的遺伝子の発現変動を阻害することを明らかにした。HBZがFoxp3に結合するだけでなく、Foxp3と相互作用するEosにも結合していた。HBZはFoxp3を中心とした転写調節タンパク質と相互作用して、その制御機構を減弱することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究は概ね達成できた。HBZにより不安定なFoxp3発現が誘導されることが炎症の一因となっていることを見出し、論文として報告した。HBZトランスジェニックマウスとIFN-gammaノックアウトマウスの交配により、IFN-gammaが炎症に重要な役割をしていることが確認できたが、IFN-gammaノックアウトマウスでも遅れて炎症が引き起こされた。IFN-gammaに依存して発現誘導されるケモカイン受容体を同定しており、その組織浸潤における役割の解析を開始している。HBZがFoxp3の作用を減弱する機序の解析は順調に進み、論文投稿に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究からHBZによる炎症惹起機構にはIFN-gammaが重要であることが明らかになったが、IFN-gammaノックアウトでも遅れて炎症が起こり、発がんも誘導される。このためIFN-gamma以外の炎症惹起機構を考える必要があり、現在、実験を計画中である。IFN-gammaによるTリンパ球の組織浸潤に関しては関与が疑われるケモカイン受容体を同定しつつあり、その意義を解析していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
HBZによる炎症の機序としてインターフェロンガンマによって誘導されるケモカイン受容体が関連することが示唆され、その解析を行う必要が生じた。また、HBZによるFoxp3機能障害に関して追加の動物実験を行う必要が生じた。 1.HBZトランスジェニックマウス、HBZ-Tg/IFN-gamma KOマウスにおいて差が認められるケモカイン受容体を特定し、そのリガンドを用いた遊走試験を行う。 2.HBZによるFoxp3機能障害機構の研究として、免疫不全マウスを用いた移入実験を行う。
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