研究課題
基盤研究(B)
申請者らが、抗アポトーシス分子として単離したアナモルシン(Anamorsin, AM)は既知の抗アポトーシス分子とは類似の構造をもたない新規の分子である。AM欠損マウスは、身体が小さく、胎児肝における二次造血が傷害され、胎生後期に致死となる。申請者らはAMがAMのyeastホモローグであるDre2と同様に鉄硫黄(Fe-S)クラスター形成に関与することを明らかにし、また、Fe-Sクラスター形成のみではなく、細胞内の鉄代謝に重要な役割を果たしていることも明らかにしてきた。本研究では、AMのコンディショナルノックアウトマウスを作成し、各種の造血細胞におけるAMの機能を解析する。さらに、成体マウスの造血幹細胞においてAMを欠損させることで、骨髄異形成症候群(MDS)の病態を示すモデルマウスが作成できるか検討する予定である。AM遺伝子の通常のノックアウトマウスは胎生致死であり、成体造血におけるAMの機能解析が不可能であった。本研究では、最初に、Cre-loxP system を用いたAMのコンディショナルノックアウトマウスを作成する予定である。その後、各種の造血細胞に特異的なプロモーターの下流でCre recombinaseを発現するトランスジェニックマウスと交配させ、造血幹細胞、Tリンパ球、Bリンパ球など、血液細胞の系統特異的にAMを欠損させたマウスを作成し、それらの表現型を解析する。本年度は、AMのExon4をloxP配列で挟んだTargeting vectorを、目的の遺伝子座にtargetしたES細胞株を選択し、野生型マウスの受精卵(桑実胚)に注入した。仮親に受精卵(桑実胚)を移植し誕生したキメラマウスと野生型マウスを交配し、ヘテロ欠損マウスを得た。さらに、ヘテロ欠損マウス同士を交配することで、ホモのAMコンディショナルノックアウトマウス(AM loxP KOマウス)を得た。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画実施のための土台となるAMコンディショナルノックアウトマウス(AM loxP KOマウス)を得ることができた。AMコンディショナルノックアウトマウスの作成がうまくいかなかった場合のバックアップの実験として、AMコンディショナルノックアウトマウスを作成するために作成したtargeting vectorを用い、以前AMノックアウトマウスを作成した際に樹立したAM遺伝子ヘテロ欠損ES細胞株に作用させ、AMコンディショナルノックアウトES細胞株を作成することを試みたが、このES細胞株の樹立はいまだ成功していない。
AMコンディショナルノックアウトマウス(AM loxP KOマウス)と、各種の造血細胞系統特異的に活性化されているプロモーターの下流にCre-recombinaseを発現させたトランスジェニック(Tg)マウスを交配し、造血細胞系統特異的AM欠損マウスを作成し、その表現型を解析する。具体的には、造血幹細胞、Bリンパ球、Tリンパ球のAMを欠損させるために、Tie-2 Cre Tgマウス、CD19 Cre Tgマウス、lck Cre Tgマウスと交配し、目的のマウスを作成し、その表現型を解析する。また、Mx Cre Tgマウスと交配し、成体となった特定の時期にIFNまたはpIpC処理をおこない、AMを欠損させることによって、成体での造血細胞のAMの機能を評価する。最初に、Tie-2 Cre Tg-AM loxP KOマウスの造血能および血球形態の観察をおこなう。通常のAMノックアウトマウスは、貧血を呈し、胎生後期に致死となるが、胎児の身体のサイズも小さく、また、胎児線維芽細胞の増殖能も著しく低下していることから、AM KOマウスの死因が貧血によるものかどうかは不明であった。Tie-2 Cre Tg-AM loxP KOマウスを解析することで、in vivoでの造血能におよぼすAMの役割が、より明確になると思われる。AM KOマウスの胎児肝から得た赤芽球細胞は、巨赤芽球様形態を呈し、未分化な細胞の割合が多く、赤血球の分化障害を認める。また、AM KOマウスの細胞内では、Fe-Sクラスター蛋白であるIRP-1やキサンチンオキシダーゼの活性の低下、自由鉄の増加、ROSの蓄積が認められており、AMが欠損することで、鉄の利用障害が起こっている可能性が考えられる。以上のデータから、Tie-2 Cre Tg-AM loxP KOマウスの造血能、特に赤血球系造血は障害されていると思われる。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Int J Hematol
巻: 98 ページ: 406-416
10.1007/s12185-013-1404-y
Immunity
巻: 38 ページ: 1105-1115
10.1016/j.immuni.2013.05.014
Leuk Lymphoma
巻: 54 ページ: 1450-1458
10.3109/10428194.2012.745074
www.hematology.pro