研究課題
基盤研究(B)
致死的急性型間質性肺炎を合併する皮膚筋炎(DM)および「筋症状のない」皮膚筋炎(CADM)においては、ウイルスRNAの細胞質内受容体であるMDA5(IFIH1)に対する特異自己抗体が検出される。本研究は抗MDA5抗体およびその対応抗原MDA5の病因的意義と病態形成における役割を追究し、同疾患の生命予後改善を図ることを目的とする。1.抗MDA5抗体が認識するエピトープと抗体検出法の開発: MDA5-cDNAをN末端側とC末端側に2分して組換え蛋白を作成、抗MDA5抗体陽性血清はN末側・C末側の両者と反応し、複数の抗原エピトープを持つことを示した。このC末側組換え蛋白を精製、ELISAプレートに固相化し、抗体検出用ELISAを作成した。抗MDA5抗体陽性血清での高い特異性を確認し、死亡例では治療前の抗体価が有意に高く、また治療反応例では経時的に抗体価が低下することが証明された。2.抗MDA5抗体と関連する新規自己抗体の検討: 抗MDA5抗体陽性患者の一部に未知の120kDa蛋白を同時に免疫沈降する症例があり、しかも病初期は陰性でも経過中に新たに出現することを見出した。この未知の抗体陽性患者は特に生命予後が不良であり大多数の患者が死に至る。自己抗原120kDa蛋白の同定を行っている。3.抗MDA5抗体産生モデルマウスの作成: MDA5欠損マウスにMDA5を免疫し、抗MDA5抗体を産生させた。抗体陽性マウス血清を同系統のワイルドタイプマウスに投与して、その表現型を検討中である。4.抗MDA5抗体陽性患者の生命予後を改善する治療法の多施設臨床研究: 抗MDA5抗体陽性DM/CADM患者に対し、プレドニゾロン大量療法、タクロリムス、シクロホスファミド大量間歇静注療法の3者併用療法を行う治療プロトコールを作成し、研究代表者施設の倫理委員会へ申請した。当初計画のシクロスポリンを最近保険適応となったタクロリムスに変更した。
2: おおむね順調に進展している
精製患者抗MDA5抗体を用いた抗MDA5抗体自身の病原性(病態形成に及ぼす影響)の検討を予定していたが、同抗体陽性皮膚筋炎患者は侵襲的な検査や処置をきっかけに急速に間質性肺炎が増悪することがあり、また早急な治療介入を要するため、研究期間内で十分な患者材料を得ることができなかった。他の研究計画は概ね順調に進展できている。
抗MDA5抗体陽性の皮膚筋炎(DM)および「筋症状のない」皮膚筋炎(CADM)は急速進行性間質性肺炎を高率に合併し極めて生命予後の悪い難治性病態である。早期の強力な治療介入(3剤併用による免疫抑制療法)が予後を改善する可能性が示唆されたため、この治療法の有効性と安全性を検証する目的で多施設共同臨床研究を推進し、本年度中にエントリーを開始したい。また、抗MDA5抗体の産生機序、病因的意義についてもモデルマウス、患者検体を利用して引き続き研究を進める。本年度も患者検体の集積に務める。また、今回の研究過程で新たに発見した、抗MDA5抗体と併存する新規自己抗体について、その対応抗原の同定と臨床的・病因的意義についても検討を加えたい。
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