研究課題/領域番号 |
25293226
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
立川 愛 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10396880)
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研究分担者 |
金子 新 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (40361331)
鯉渕 智彦 東京大学, 医科学研究所, 講師 (50313094)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | HIV感染症 / 免疫細胞療法 / 抗原特異的CTL / iPS細胞 / 免疫老化 |
研究概要 |
本研究ではHIV感染症の治癒を目的としたHIV特異的CTLによる細胞免疫療法の確立を目指す。抗HIV治療下で治癒を妨げる潜伏感染細胞を再活性化しウイルス抗原発現を促し、特異的CTLにより再活性化感染細胞を排除させる、という戦略に基づく。HIV感染ではHIV特異的CTLが強力に誘導されるが、1) CTLの標的部位にアミノ酸変異を生じた逃避変異ウイルスの出現、2) 慢性的な抗原刺激によるHIV特異的CTLの疲弊・老化による不可逆的な機能不全により、慢性期ではその抗HIV効果が十分でないことが知られている。本研究ではこれらの問題点を克服し、抗ウイルス効果の高い有効なHIV特異的CTLの樹立を目指す。 1) 抗HIV効果が期待されるCTL標的部位の検討 HLA分布の異なる欧米やアフリカで抗ウイルス効果の高いCTLの標的部位であることが確認されているGagに焦点を絞り、日本人HIV感染者でのCTL応答と臨床パラメーターの関連性を調べた。Gagタンパク質をカバーするオーバーラップペプチド(OLP)を用いてELISpot assayによりCTLの標的となっている部位を特定し、各標的部位でのCTL応答の有無とウイルス量との関連を調べたところ、p24タンパク質前半の特定の領域にCTL応答を有するHIV感染者ではCTL応答のないHIV感染者に比して有意にウイルス量が低く、この領域を標的とするCTLは慢性感染期においてもウイルス抑制に寄与していることが示唆された。 2) 抗HIV効果の高いHIV特異的CTL誘導法の開発 分担研究者は世界で初めて抗原特異的T細胞から樹立したiPS細胞から抗原特異性を維持した再分化T細胞の樹立に成功した。本研究では当該新規技術を用いて老化したHIV特異的CTLをリプログラミングし、再分化し若返らせたHIV特異的CTLを樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、iPS細胞技術を用いてHIV感染症に対する新規治療法としてのHIV特異的CTLを用いた細胞免疫療法の確立を目指している。治療の対象となる慢性感染期のHIV感染者におけるCTLは、逃避変異ウイルスの出現と、疲弊・老化による不可逆的な機能不全という問題点を有する。本研究ではこの2つの問題を克服し、抗HIV効果の高いCTLの樹立を目的とする。そのうち、本年度は日本人集団において高い抗HIV効果が期待される領域として、逃避変異ウイルスの出現の可能性が低い標的部位を特定することができた。 また、iPS細胞から再分化させたHIV特異的CTLの解析は現在進行中であり、免疫学的解析による機能評価に加え、HIV増殖阻害試験により実際の感染細胞での感染抑制効果を解析しており、iPS細胞技術を用いて若返らせたHIV特異的CTLの評価に成功しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、まずiPS細胞から再分化させたHIV特異的CTLの性質、機能、抗HIV効果についての評価系を確立し、現在既に樹立されている再分化HIV特異的CTLの評価を行う。さらに、HIV感染者から同意に基づき提供された臨床試料を用いて、今年度特定された高い抗HIV効果を期待できる標的部位に特異的なCTLをクローン化し、iPS細胞化、T細胞への再分化を行い、同様に抗HIV効果を評価する。 また、今年度は未治療の慢性HIV感染者における標的部位を解析した。本治療戦略の対象者は長期抗HIV治療によりウイルスをコントロールしている感染者を想定しているため、抗原量が著明に減少しHIV特異的CTLはメモリー細胞として存在している未治療感染者におけるCTLとそのレパートリーが異なる可能性がある。次年度以降ではGag-OLPを用いた標的部位の同定を長期治療感染者より提供された試料についても解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、HIV感染者から同意に基づき提供していただいた血液試料を研究材料として用いる。血液試料は細胞と血漿に分画され、それぞれ液体窒素、-80℃フリーザー内で厳重に保管されている。当初の計画では既存の細胞保存用液体窒素容器のスペースが不足することを考慮し、液体窒素タンクの購入を想定していたが、予定より研究材料の提供数が少なかったため今年度の購入は不要であったため。またHIV抗原をカバーするオーバーラップペプチドの新規購入も想定していたが、今年度内での購入は不要であったため。 次年度以降、不足が予測されるため、必要に応じて当初想定していた保存容器、ペプチドを購入する予定である。
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